佐々木朗希投手(3年)を擁する大船渡(岩手)が、2試合連続の延長戦となった準々決勝で久慈に6-4と競り勝ち、06年以来13年ぶりの4強入りを決めた。

佐々木は21日に194球を投げた疲労を考慮され、投打ともに出場はなかったが、国保陽平監督(32)の隣に座り、声や的確な指示など“第2の監督”として仲間を援護した。24日の準決勝では、同じ公立の一関工と対戦する。勝てば決勝は25日。エースとして、連投で35年ぶりの甲子園出場をつかみ取る覚悟を決めた。

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佐々木がベンチから“指揮”を執った。「試合に出ていないので、仲間を信じて声援を送りました。勝つために自分ができることをやるだけ。仲間が必死に戦ってくれたと思います」。攻守交代時には水やグラブを運び、捕手の防具も片づけるなど、拍手や大声を出しながらサポートした。

仲間の守備位置も細かく修正した。2回、両手でメガホンを作るように木下大洋外野手(3年)へ「もっと右~」。すると移動した場所に左飛。4回攻撃前には「低めの変化球は捨てよう」と進言し、2点先制につなげた。6回無死満塁では佐藤良樹内野手(3年)にジェスチャーを含めて「高め、高め、上からたたいていこう」。佐藤は高めの直球を強く転がし、左前2点適時打で加点した。佐々木は「春までは勝負強さがなかったが、この夏で克服できてきた」。昨夏は県大会3回戦、今春の県大会1回戦、自身が登板しないまま敗れた反省を生かした。

仲間を支えることは日常茶飯事だ。遠征や練習試合で大量の荷物をバスにきれいに積み降ろしするのは大得意。後輩たちと一緒にパズルのように隙間なく整理する。ミーティングでは、バットをペンに持ち替え、ホワイトボードの前で司会進行役をかって出る。意見や疑問をみんなから引き出し、仲間の頭の中を整理するのも得意技だ。

出場回避は球場入り前の朝練習で伝えられた。前夜からマッサージなどを施し、睡眠も十分とったが、国保監督が「投げられますって感じでしたけれど、ケガも怖いので」と決断。佐々木は11回の好機にバッグから打撃グラブを取り出したが、「代打だとしても次の守備のこともあるので」との監督判断で、そっと脇に置く場面もあった。

仲間が作ってくれた中2日の休養を生かす。昨秋は連戦で股関節痛に見舞われたが「ひと冬越して強くなりました。ベストコンディションになる方法も学んできた。(連投は)できないことではないので頑張ります」。仲間と夢見てきた甲子園切符。残り2試合は、マウンドで最大級の存在感を示す。【鎌田直秀】