金光大阪が三度目の正直に挑む。25日の5回戦で、昨年の南大阪大会準Vの大商大堺を14-6の逆転勝ちで下し、8強に進出。準々決勝の相手は昨夏の準々決勝、昨秋の3回戦と敗れ続けてきた大阪桐蔭。打倒横綱で、あと3つと迫った12年ぶりの甲子園出場切符を目指す。

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金光大阪が執念の逆転勝ちで8強に進出。昨夏、昨秋と続いた大阪桐蔭に対する「敗戦物語」を完結させるための舞台にたどりついた。

エース鰺坂(あじさか)由樹投手(3年)にとっては「記憶にない敗戦」がある。先発した昨秋の大阪桐蔭戦の中盤、打席に向かう際に意識を失った。救急車で搬送され、気づくと病院のベッドの上。点滴を受けその日のうちに自宅に戻ったが「こけて気がついたら病院でした」と当時の記憶はおぼろげ。高校入学後、何度か急に意識を失う症状に見舞われた。成長期に起こる一つの症状とも考えられるが、原因は不明。後日、試合の映像で自分が倒れたことを確認した。現在は症状が治まっているが、最後まで投げきれなかった悔しさだけが残った。

その闘志を夏にぶつけてきた。この日の逆転劇は3点を追う5回1死、鰺坂の気迫から始まった。「まだ終わってへんぞ」。ヘッドスライディングの内野安打で出塁。熱い気持ちがナインに伝わり、押し出しや適時打でこの回一挙7得点。試合をひっくり返した。

偉大な先輩の支えも大物撃破の力に変える。中日吉見一起投手が年に2回ほど差し入れるボールで、練習を重ねてきた。冬場、同校グラウンドで自主トレを行う吉見の背中に選手は刺激を受けてきた。横井一裕監督(44)は「吉見は走ることも、キャッチボールも丁寧。吉見の姿を見ながら勉強してくれた」。実直に野球と向き合うプロの姿勢を手本に「選手はいちいち心を乱すことがなくなった」と精神面が成長した。

準々決勝ではいよいよ大阪桐蔭と対戦する。鰺坂はもちろん「この夏リベンジしたいです」。横井監督も「僕も桐蔭さんとやりたいです」。王者を倒し、頂点へと突っ走る。【望月千草】