昨秋、新体制でスタートした東北が甲子園に王手をかけた。柴田に倍近い10安打を浴び、7イニングで得点圏に走者を背負う苦しい展開。それでも及川瞬、大岩祥英、紫葉優太の3投手(いずれも3年)の継投で、2失点に抑え逃げ切った。

2回、7番・石川原太陽内野手(3年)のスクイズで先制し、続く斎藤大智内野手(2年)の適時三塁打で加点。しかしそれ以降、相手投手を攻略できず追加点を奪えなかった。

重苦しい雰囲気を変えたのは3番・西田の一振りだった。2-1で迎えた6回、インコース高めのカーブを捉え、公式戦1号を右翼スタンドに突き刺した。初回に直球を打ち遊ゴロに倒れた反省から、狙い球を変化球に絞った。「センターにはじく意識で塁に出ようと思っていた。本塁打は狙ってなかったが、感触は良かった。一塁を回った時点で確信した」。この1発が、チームを勝利に導いた。西田は「(相手投手は)途中から疲れが見え、真ん中にボールが来るようになった。前の回から変化球が多かった」と冷静に分析していた。決勝戦に向け「1個1個アウトを取り、最後は相手よりも1点でも多く取りたい」と気合を入れた。

富沢清徳監督(52)は「厳しい試合だった。好投手と聞いていて、点は多く取れないと思っていたので、少ないチャンスをものにできた。継投策は早め早めにと決めていたわけではないが、テンポ良く投げられる紫葉を投げさせた。いつ代えようかと思ったが頑張ってくれた」と言葉に実感を込め、辛勝を振り返った。。聖地まで、あと1勝に迫った。富沢監督は昨秋の就任時に「東北高校は『甲子園に出ましょう』ではダメ。全国で戦える、勝てるチームにしなくてはいけない」と宣言している。県大会優勝は、あくまでもスタート。今日も勝つことが、新生・東北のスタートラインとなる。【山田愛斗】