第1シードの仙台育英が15-10で東北に打ち勝ち、3年連続28度目の甲子園出場を決めた。

一時は1-6とリードを許したが、3回裏に一挙7得点。4回に再びリードされても、主将の千葉蓮内野手(3年)が公式戦初となる左越え2ランで再逆転して勝利を呼び込んだ。夏の“私学宿敵対決”は通算33戦目(引き分け再試合を含む)で19勝1分け13敗となったが、両校2ケタ得点は史上初。17安打を放った強力打線で4度目の3連覇を飾り、悲願の日本一に挑む。

  ◇    ◇    ◇

千葉主将が生涯一の会心の一撃で、救世主となった。8-9で迎えた4回裏無死1塁、フルカウントから甘く入った直球をフルスイング。「内角を攻めてくると思って狙った。高校通算3本目で、公式戦ではホームランを打ったことがなかったので入るのか分からなかったが、応援の力と風が押してくれました」。一塁を回って柵越えを確認すると、全校応援の満員スタンドに向かってガッツポーズした。

想定をはるかに超えた序盤の失点だった。経験のない連続失策から適時打。千葉は「ここまでのビハインドは経験がなかったけれど、自然と焦りはなかった。守備からリズムを作ろうと話していました」。冷静に仲間を鼓舞した。3回表に3者凡退に切った直後、3連打やスクイズなど打者一巡の攻撃で一挙7得点。その後も長短打で加点し、東北相手に過去最高の15得点を奪った。

須江航監督(36)就任後、初甲子園だった昨夏の悔しさを選手たちは糧にしてきた。浦和学院(南埼玉)との初戦2回戦で0-9の大敗。出場していたエース右腕・大栄陽斗(3年)と「4番」小濃塁外野手(3年)を中心に「練習から隙のあるプレーをしていたら甲子園で一気にのみ込まれる」と言い合ってきた。練習中から互いを厳しく指摘し合い、好プレーには笑顔でたたえることを徹底。今春の関東遠征で慶応(神奈川)相手にリードされても、逆転勝ちした試合などをベンチで振り返りながら、自信を持ってつないだ打線が本領を発揮した。

リベンジを期す上級生に加え、1年生の新戦力も決勝でも活躍した。投手も兼ねる笹倉世凪内野手は3回に左中間2点適時三塁打。7回から登板した伊藤樹投手も3回1安打で最後を締め、今大会通じて無失点。途中出場の木村航大捕手も好リードで支えた。

平成元年の夏、大越基投手(現早鞆=山口=監督)を擁して同校初の甲子園準優勝。令和初の夏こそ、悲願の大旗白河越えに挑む。千葉は「去年の先輩たちの悔しさを晴らしたいし、まずは須江先生のためにも甲子園1勝を挙げつつ日本一になりたい」。新チーム以降、特化して磨いてきた打力を武器に、聖地で勝負する。【鎌田直秀】

◆仙台育英 1905年(明38)創立の私立校。生徒数は3172人(女子1365人)。野球部は30年創部。部員103人、マネジャー1人。甲子園出場は春12度、夏28度目。主なOBは楽天由規、ソフトバンク上林誠知、楽天西巻賢二ら。仙台市宮城野区宮城野2の4の1。加藤雄彦校長。