プロ注目の俊足好打の富島(宮崎)・松浦佑星内野手(3年)は、最後の夏に甲子園で輝きを放った。

9回最後の攻撃、1死走者なしから、左中間へ三塁打。「主将としてなんとかしたかった。最後まで力を出せた」。甲子園初勝利はならなかったが、涙はなかった。

1点をリードされた直後の4回、先頭打者で平凡な一ゴロを、50メートル6秒2の俊足を飛ばして内野安打にすると、完全にモーションを盗んで二盗に成功。その後、2死一、三塁からの重盗で、一時同点に追いつくホームイン。「重盗のサインでしまったと思ったが、あきらめずに捕手がこっちに向かってきたのをみて、すり抜けられると思った」。三本間に挟まれながら、相手野手の送球の一瞬のスキをついて本塁を陥れる“忍者”のような走塁に、甲子園のスタンドも沸いた。

今年4月末の練習試合で走塁の際に左足首を痛めた。診断の結果は疲労骨折。それでも夏に出場するため、即手術を受けてボルトを埋め込むことを決断。そのボルトは入ったままで、甲子園に乗り込んだ。「まだ違和感はある」といいながら、そんなハンディを負っていることを感じさせない躍動ぶりだった。守備でも華麗なゴロさばきを披露するなど「走・攻・守」で実力を発揮。「足は全然、問題ありませんでした」と言い訳にはしなかった。昨年センバツでは失策をおかして「自分のプレーは全然できなかった」と反省していた男が、最後の夏で力を発揮した。

宮崎の公立校から甲子園を2度経験した。「自分を大きく成長させてくれるところでした」。卒業後は大学進学を目指す。甲子園では勝つことはできなかったが、次のステージでの糧にする。【浦田由紀夫】