見よ、これがサガミの力だ。4年ぶりのV奪回を狙う東海大相模が近江に快勝し、初戦を突破した。

昨夏8強左腕の林の対策を施して臨んだ。6安打と打ち崩すまではいかなかったが、全力疾走と、相手の隙を逃さない積極走塁を徹底。足を絡めて6点を積み重ねた。15日の中京学院大中京との3回戦にコマを進めた。

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ため息が、どよめきに変わった。6回無死一塁。西川のバントの打球は、本塁後方へふわっと上がった。近江の捕手・有馬が飛び込む。捕った瞬間、一走の井上がスタート。「飛び込んだ後の体勢はきつい」と、同じ捕手として判断できた。有馬もすぐに起き上がり二塁へ投げたが、足が勝った。50メートル6秒5。俊足ではないが、捕邪飛のタッチアップに「自信はありました」。続く山村の右前打で生還。3点目を奪い、さらに2得点。大勢を決めた。

徹底して林対策を重ねた。ティー打撃では発泡スチロール球を使用。不規則に減速する球を引きつけ、宝刀チェンジアップをイメージした。打撃投手は林を形態模写。右足を高く上げた。宿舎の映像部屋では林の投球を流し、各自でタイミングを取る練習を続けた。

神奈川大会決勝24得点の打線が、そこまでして6安打のみ。屈指の左腕攻略は足からだった。初回から内野ゴロが続いたが、全員全力疾走。プレッシャーをかけ続け、4回に突破口を開く。2死二塁で金城のゴロを遊撃土田が後逸。三塁コーチ高嶋は「コーチが迷うと走者も迷う」と腕をぶん回す。二走の井上が一気に先制ホームを踏んだ。

5回の2点目も足だ。無死二塁で本間のバントは捕ゴロになったが、二走の遠藤が二、三塁間で粘る間に二塁到達。次打者の左前打で生還した。6回の5点目は再び金城が敵失(三塁手の悪送球)で出塁。「一塁のバックアップが遠い」と見逃さずに二塁を陥れ、本間の中前打で生還した。

東海大相模には厳格な走塁ルールがある。「戻ってアウトはダメ。行ってアウトはOK」。常に隙をうかがい、先を狙う。準備のたまものでもある。井上は練習で捕邪飛のタッチアップを何度も試みていた。「初めて成功。練習で失敗したから判断力がついたと思います」。高嶋は試合前のシートノックで、近江外野陣の肩をチェック。判断基準を頭にたたき込んだ。

門馬敬治監督(49)は「いつも通り。出塁したら次の塁。うちのアグレッシブベースボールです」と故原貢氏からの伝統を強調した。選手は誰もが当たり前に「日本一」と口にする。4年ぶりの頂点へ、突っ走る。【古川真弥】

▽東海大相模・本間(5回、捕ゴロで二塁到達)「一塁を回った時、遠藤が挟まれていたのが三塁寄りだったのと、二塁も(カバーがおらず)空いていたので、行きました」

▽東海大相模・山村(6回1死二塁、金城のゴロを近江の三塁手が悪送球。二塁から一気に生還)「最後は自分の判断ですが、三塁コーチを信頼してます。ゴロの時は悪送球があり得ると考えてやってます」