<全国高校野球選手権:履正社5-3星稜>◇22日◇決勝

1球が、1つのプレーが勝負を分ける。令和となって最初の夏。熱い戦いのワンシーンを「ヨネちゃんの『プレー』バック」と題して切り取った。

   ◇   ◇   ◇

同点に追いつかれた直後の先頭打者だった。8回無死。履正社の内倉一冴一塁手(3年)が粘った。「凡退したら奥川を乗せる。なんとか出ようと思った」。2球で2ストライクとされながら5球連続ファウル。1球見逃し、9球目のスライダーを二塁打した。

152キロの速球、フォーク、チェンジアップ、スライダー2の計5球を連続してファウルにした。チームの奥川対策は「低めの変化球は捨て、甘く来た速球を狙おう」だった。内倉は違った。「追い込まれたんで、粘るしかなかった。粘ってからスライダーにいいイメージがあった」。甘いスライダーをとらえて無死二塁。勝ち越しのホームを踏んだ。

センバツでは3打数3三振だった。「家に帰ってからちゃんとバットを振るようになった。それまで眠くなるとやめたんですが」。連日、帰宅後に1時間バットを振った。この日、奥川に5打数2安打。1人で計25球を投げさせ、空振りは1球もなかった。

「今まで自分の点数はなかったけど、今日は100点満点をつけたいです」。うれし涙の顔がこう言い切った。【米谷輝昭】