優勝候補の磐田東が、劇的な幕切れで掛川西を4-3で下した。2点を追う最終回に同点とし、なお2死一、二塁で2番新倉伯斗(はくと)内野手(3年)が、左前にサヨナラ打を放った。

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磐田東が、土壇場で逆転劇を演じた。2点を追う最終7回裏、先頭の5番小林宥稀(ゆうき)内野手(3年)からの3連打などで同点。なおも2死一、二塁の好機で、新倉に打席が回った。直前には、プロ注目の二俣翔一捕手(3年)が申告敬遠で歩かされた。

新倉は「この状況を想定して、大会前から『キーマン』と言われていた。絶対に打ってやると思った」。バットを通常より指2本分、短く握った。フルカウントからの7球目。高めに浮いた真っすぐを捉え、左前に運んだ。人生初のサヨナラ打。ベンチを飛び出す仲間と喜びを爆発させた。

エース野ケ本英典(3年)が2回に先制3ランを浴びるなど、3回で降板。山内克之監督(65)は「5回まで野ケ本、残り2回を二俣で締めるのが理想」と話す。1回戦でも見せた“必勝リレー”が崩れたが、故障明けの川原愉史(ゆひと)投手(3年)が4回2安打無失点と好救援。全員で難局を乗り越えた。

負けられない理由がある。山内監督が、定年のため今夏を最後に勇退。掛川西と浜名を率いて春夏計4度の甲子園出場を果たした名将の夏通算100勝(県内)まで、残り4勝だ。新倉は「100勝をプレゼントする」と誓い、浜松北との3回戦を見据えた。【前田和哉】

○…磐田東の山内監督と掛川西の大石卓哉監督(40)は、98年に掛川西の監督と主将として夏の甲子園出場を果たした。6-3で磐田東が勝利した昨年の秋季大会に続いて実現した「師弟対決」は、恩師が教え子のリベンジを許さなかった。山内監督は「大石監督が(高校時代に)主将として苦労した姿を知っている。意識しない訳がない」と振り返った。大石監督は「(山内監督)最後の夏に戦わせてもらって本当に…」と声を詰まらせ、「教えていただいたことを生かしてもっと良いチームを作っていきたい」と顔を上げた。