阪神や大リーグなどで活躍した藪恵壹氏(51)の次男で関西学院(兵庫)の雅博外野手(3年)が兵庫独自大会2回戦(ベイコム)で9得点の快勝発進に貢献した。駆けつけた父の前で「2番左翼」で出場。1回、先制点につながる犠打を決めたほか2安打1盗塁と躍動した。また、元阪神で松井秀喜キラーで名をはせた浪速(大阪)の遠山昭治監督(53)も公式戦初采配で白星デビュー。猛虎のDNAを受け継ぐ高校野球が熱い。

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すらりと手足が長い、181センチの藪雅博が躍動した。端正な顔つきは父の恵壹氏譲りだ。1回無死一塁。低めの初球。身をかがめて難なく犠打を決めた。敵失を誘い3点先制をお膳立て。初戦9得点の大勝に貢献し「大事なバントを決められて良かった。チームの勝ちに結びつけられて良かった」と胸をなで下ろした。

シュアなバットさばきが光る左打者だ。2回は中前打を放つと二盗に成功。6回も再び中前へ。4打数2安打1盗塁の活躍を、広岡正信監督(66)も「柔らかいし、独特なミートポイントで人と違う。100点だな」と評価した。雅博も「いい形でスタートを切れました」と声をはずませた。

「一生懸命、頑張れ!」

前日22日、阪神エースで84勝を挙げ、一時代を築いた父から声を掛けられた。幼い頃はアスレチックス、ジャイアンツで投げる大リーガーだった。同じ野球選手として「努力の量がすごい。(野球を)続けることはすごく難しい。すごかったから素晴らしい舞台に立てて活躍できた。いい手本で、ありがたい」と尊敬する。この日、親父も客席で温かいまなざしを送った。

恵壹氏 全員攻撃で、いい試合でした。あの子は骨格がガッチリしている。足が速い。盗塁も上手です。

だが、辛口も忘れない。「最後の打席、初球のファウル。なってない! カットのようなね。もったいない」。毎日、素振りする姿も見てきた。「長打を打ってほしいね。高校通算3本塁打でしょう。俺の方が打っている。4本だから」と注文。新宮(和歌山)で高校球児だった当時を思い起こして、熱血エールを送った。

雅博は言う。「チームはすごくいい雰囲気。素晴らしいパフォーマンスを出せるように」。6回先頭での打席前、継投した右腕の球筋をチェック。後続の打者にジェスチャーで球種を伝えた。勝っても甲子園にはつながらないが、人生でたった1度の最後の夏。最高の仲間とともに、また試合ができる。【酒井俊作】

○…関西学院は「元虎チルドレン」が集結している。マネジャーの北川千尋さん(2年)は阪神2軍打撃コーチを務める北川博敏氏(48)の長女。広岡監督が「新井もいるよ」と笑うように、1年では元広島、阪神の新井貴浩氏(43)の長男・亮規浩(あきひろ)内野手もプレーする。3学年にわたって、元阪神ナインの子息や令嬢が在籍する珍しいケースだ。また、阪神田中秀太スカウト(43)の長男太晴(たいせい)くんは報徳学園(兵庫)のマネジャー(3年)。甲子園のお膝元で元阪神の父を持つ子どもたちが奮闘している。

◆藪雅博(やぶ・まさひろ)2003年(平15)1月22日生まれ、兵庫県出身。小学3年から芦屋ベアーズで野球を開始し、関西学院中学部では三塁手や外野手。関西学院高等部では1年秋にベンチ入り。2年春はメンバー漏れも、夏はベンチ復帰。181センチ、75キロ。右投げ左打ち。