聖光学院(福島)が8-0で仙台育英(宮城)を退け、東北6県の独自大会を制したチームの頂点に立った。エース舘池亮佑投手(3年)が5安打完封。打線は5回に大量6点を奪い試合を決めた。県大会では磐城、今大会で鶴岡東(山形)と仙台育英を撃破。東北のセンバツ代表校で、15日からの甲子園交流試合に出場する3校すべてに土を付け、底力を見せつけた。

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聖光学院の選手たちにとっては、夏の甲子園決勝に値する戦いだった。143球の熱投で昨秋の東北王者を完封した舘池は、「自分の肩や肘が使えなくなってもいいから、最後まで投げ抜こうと思っていた」と完全燃焼する覚悟だった。初回にいきなり連打を浴び無死一、二塁。3番佐々木涼外野手(3年)に対してストライクが入らず、カウント3-0になっても慌てなかった。「チームを負けさせられない意地があった。ギアを上げて、ど真ん中でもいいと開き直った」と佐々木、続くプロ注目の4番入江大樹内野手(3年)を連続見逃し三振。5番笹倉世凪内野手(2年)を遊ゴロに仕留め、ピンチをしのいだ。まさに聖光学院野球部が信念として掲げてきた「不動心」を地でいく投球だった。

今年の夏は、地方大会の戦後最長連続優勝記録の更新のみならず、戦前の和歌山中(現桐蔭)に並ぶ14連覇がかかっていた。しかし、コロナ禍で夏の甲子園が中止となった。選手たちは代替大会を「心の中の甲子園」と決めモチベーションを保った。舘池は「兵庫の甲子園には行けなかったけど、東北大会の舞台を借りて自分たちの野球をやり切った。最高の形で終わることができた。甲子園の準決勝、決勝という気持ちで臨みました」とすがすがしい笑顔を見せた。

昨秋、県大会初戦でコールド負けしたチームが、県大会の磐城に続き、今大会初戦の準決勝で鶴岡東、決勝で仙台育英とこの後、甲子園交流試合に出場する3校に勝利した。斎藤智也監督(57)は「これから甲子園に出るチームと戦えて勝てたことは光栄」。試合後にあいさつに来た仙台育英の田中祥都主将(3年)らに「吉報を待ってるぞ」とエールを送った。

3年間、じっくり心技体を鍛えられ、最後の夏に真価を発揮するのが聖光学院スタイル。舘池は入学以来、右肘の故障なども重なり、昨秋まではベンチ入りすらできなかった。この日、スタメンに抜てきされた背番号15の藤田竜輝内野手(3年)は3安打を放った。斎藤監督は「海野(卓人、3年)、内山(連希、3年)も不器用だけどいぶし銀の活躍をしてくれた。『ザ・聖光学院』の野球を見せてくれた。ぶざまだったチームが、語り継がれるようなチームになった」と最大限の賛辞を送った。【野上伸悟】