土屋恵三郎監督(66)の言葉が、星槎国際湘南の快進撃を物語っていた。

「ノーシードから最後まで諦めずにやってくれた。今日は目に見えないミスがあったが、ノーシードでもここまでやれる。最後まで頑張ってくれた」

2回に7失点し、序盤で6点のビハインドを負った。だが、3回以降、小刻みに加点し、3点差まで追い上げた。9回も2死一、三塁をつくり、1発が出れば同点まで迫った。4強で敗れはしたが、シード校を次々と撃破。今大会の“台風の目”になった。

徹底した戦いぶりが光った。土屋監督は打者個々に打撃フォームから指導。各自がレベルスイングを意識した。とびぬけた長距離砲がいるわけではない。ライナーや強いゴロでつなぐ打線を組み、6試合で計73得点。1試合平均12・2得点を挙げた。2ストライクと追い込まれても、簡単に三振しない。ファウルで粘る姿も随所に見られた。2ランスクイズを敢行したかと思えば、走者三塁で、たびたびスクイズの構えを見せて相手を揺さぶりもした。

投手陣は、動く球で打ち取る投手が複数いた。140キロ超のボールはなくても、打たせて取るスタイルで勝ち上がってきた。

チーム力の秘訣(ひけつ)を問われた浜田琉大主将(3年)は「全寮制を生かしています」と答えた。「寮生活でも、1つ1つを徹底しています。それが野球につながっていると思います」。コロナでの自粛中はミーティングを多く開き、意思の連携を図った。

土屋監督は試合中、特に攻撃中はベンチの最前列に仁王立ちし、細かく指示を出した。忘れてはいけないのが、吉成快内野手(3年)の存在だ。土屋監督の横に控えた。指示が出ると、一言一句違わず、よく通る大きな声で伝えた。浜田主将は「声でベンチ入りです」。吉成は伝令も務めた。全員の力を結集させた。

最後の戦いを終え、土屋監督は「本当は優勝を狙っていた。口にすると子どもたちが意識するので、言わなかった」と明かした。浜田は「自分たちの力を出し切っての結果。悔いはないです。あと2歩。まだまだ先でした。(後輩たちは)守りのミスを減らしていけば、かなわない相手はいないと思います」と言った。負けてもハキハキしていた。チームスローガン「必笑」の通り、元気な笑顔だった。