花巻東の最速143キロ右腕・菱川一輝(2年)が、投打にわたる活躍で存在感を際立たせた。

4番として1回に弾丸ライナーの右越え先制2ラン。エースとしても6回3安打8奪三振の1失点完投で盛岡中央を破り、8強入りを決めた。小学生時代に東北楽天ジュニアでチームメートだった仙台育英(宮城)の笹倉世凪、伊藤樹の両投手(ともに2年)らと対戦を約束した東北大会(10月14日開幕、宮城県)出場へ順調発進。コロナ禍で甲子園が中止になった3年生の思いも背負い、3年ぶりのセンバツ切符獲得も誓った。

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花巻東の「4番投手」菱川が、マウンドで気合を注入した。5回まで1安打も、6回に連打を浴びて無死二、三塁のピンチ。内野ゴロで1点は失ったが、連続四球後の満塁でセットに入ると「よっしゃあ」の大声を響かせた。4番を直球で見逃し、5番をスライダーで空振り。連続三振で締めた。「4番に三振を奪ったストレートは、一番指にかかった良いボールでした。点数は60点くらい。甘い球を打たれたし、出しちゃいけない四球もあった。コントロールは反省点」。フォークなどの変化球も低めに集め、初回も3者連続三振で発進。ライン際の相手バントを冷静に見送ってファウルにするなど、状況判断も優れている。

1年時から出場してきた打力も健在だった。昨秋県大会に続く本塁打だけでなく、2打数2安打2四球の5打点。今夏の練習試合で再会した仙台育英で活躍する宿敵と、センバツを懸けて戦う約束も原動力の1つだ。「自分たちは3年生が中止になってしまった甲子園が目標。笹倉や(伊藤)樹みたいに能力はないかもしれないけれど、勝てる投手になれたらいい。投げない時も打って勝たせる打者になります」。スタンドで見守った3年生の前で、決意を表す投打だった。

同校近くで生まれ育ち、日居城野(ひいじょうの)保育園時代には高校生だった同校OBマリナーズ菊池に肩車をしてもらった思い出もある。「偉大な方が付けてきた背番号1。先輩たちを越えていきたい」。幼少期から培ってきたハナトウ魂で、宿敵や先輩の背中を追う。【鎌田直秀】