菅義偉首相の出身地、秋田・湯沢市にある湯沢翔北が大館桂桜との3位決定戦を5-0で制し、春秋通じて初の東北大会(10月14日開幕、宮城県)出場を決めた。エース右腕・佐藤創(そう、2年)が今大会全4試合を1人で投げ抜き、最後は5安打11奪三振で完封締め。来春のセンバツ21世紀枠県推薦校へも前進した。豪雪地帯の同市からは過去に甲子園出場はない。まずは自力で東北での上位進出に挑み、聖地出場を狙う。決勝は角館が11-6で由利工を破った。また、東北大会の出場18校が出そろった。

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湯沢翔北の歴史を塗り替えても、エースに笑顔はなかった。佐藤創は制球力を生かし、今大会ベストとも言える投球で完封。9回は先頭を三振、後続を一ゴロ、三振と3者凡退で危なげなく終わらせ、雄たけびを上げたが、すぐに淡々とした表情で整列に向かった。「昨日、東北大会を決めたかったが、自分のミスで負けてしまった。昨日の分をプラマイゼロにしたという感じです」。前日の準決勝は投手戦の末、2-3の敗戦。背番号1として悔しさが頭から離れなかった。

散発5安打。「ストレートは走ってなかったが、変化球を織り交ぜ相手バッターの目線をずらしたり、芯を外すことはできた」。さらに準決勝からフォームをマイナーチェンジ。足を上げたときに上体を少しだけひねり、バネをつけて投げ「昨日と同じ力で投げても球質が違った。真っすぐが低めに伸びる感覚があった」と手応えを口にした。

今大会は1回戦からの4試合計35回を6失点(自責4)、四死球4、防御率1・03と抜群の安定感を誇った。東北大会に向けて「県大会よりも厳しい戦いになる。低めに丁寧に打ち取る投球で、県大会のように制球力でゲームメークしたい」と意気込んだ。

3位に滑り込み、小林洋介監督(34)は「選手たちはよく頑張った。新チームが歩んできた道は紆余(うよ)曲折あった。課題があるし、すっきりした気分ではないけど、次があり緊張感が保てることにホッとしています」。たたき上げの菅首相のように、秋田3位からの下克上で東北最高位を勝ち取る。【山田愛斗】