函館大有斗が札幌国際情報を延長11回の末に6-4で下し、4強入りした08年以来12年ぶりに8強入りした。元阪神投手の古溝克之監督(56)対元日本ハム投手の有倉雅史監督(53)の元プロ監督対決は11回に函館大有斗の6番竹田翔太郎(2年)の勝ち越し2点本塁打で決着した。札幌光星は北海道栄を4-0で下し、76年以来44年ぶりに準々決勝に進出した。

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大きな放物線が函館大有斗ナインに勝利を運んだ。11回2死三塁、6番竹田が甘いスライダーを強振した打球はバックスクリーン左に着弾した。2戦連発の一打で白星を引き寄せたスラッガーは「センターを越えるかなあと思っていたけど、気持ちが乗った分、行きましたね」。全員の気持ちがこの一打に結実したと強調した。

劣勢の状況でも誰1人あきらめなかった。0-4の9回。「絶対勝てる、負ける気がしなかった」。ベンチの雰囲気をそう語る竹田の内野安打を含め5長短打で土壇場で追いついた。8回まで6安打に封じられていた相手左腕、木村駿太(2年)をつかまえた。その要因の1つに元阪神投手の古溝監督の対策があった。

98年に阪神で同僚だった有倉監督が指揮する今夏の南北海道準優勝校との一戦に向けて、56歳の指揮官が一肌脱いだ。チームに左腕投手がいなく、試合前日の練習ではプロ15年間で328試合に登板した左腕の古溝監督自ら15メートルほどの距離から20分間、打撃投手を務めた。決勝本塁打を放った竹田も20球ほど投げてもらい「それがあったから打てました」と頬を緩めた。普段の練習から投手目線で打者に指導するだけでなく、自ら汗を流してたたき込んできた。

道大会初采配初白星の4日遠軽戦の勢いのままに12年ぶり8強進出。試合前に有倉監督と言葉を交わした古溝監督は「相手が有倉監督。意識しなかったといったらうそになる。でも試合が始まったら関係ない」と勝負に徹した。96年6月9日横浜戦で敗戦投手となって以来の札幌円山球場。苦い記憶は「初めての全道大会で2つも勝たせてもらえた」と喜びで塗り替えた。

春夏計13度甲子園出場の古豪も、聖地出場は春夏出場の97年が最後。竹田は「1戦1戦強くなっているのを感じる」。元プロ投手から勝者の精神を注入されたナインは、ここで立ち止まるつもりはない。【浅水友輝】

▽函館大有斗・石岡流音投手(1年=1回戦の遠軽戦に続き2番手で登板)「次も自分らしい投球をしたい」

▽札幌国際情報・有倉監督(逆転負けで初戦敗退)「なかなか自分たちの流れにできなかった。ここぞの勝負どころで甘さが出た。相手が上だった」

◆古溝克之(ふるみぞ・かつゆき)1963年(昭38)11月14日生まれ、福島県出身。福島商-専売東北を経て84年ドラフト2位で阪急入団。94年阪神、99年日本ハムに移籍。同年引退。通算328試合、33勝51敗42セーブ、防御率4・49。現役時代は180センチ、88キロ。左投げ左打ち。

◆有倉雅史(ありくら・まさし)1967年(昭42)6月12日生まれ、北海道出身。北海-日体大を経て89年ドラフト6位で日本ハム入団。96年ダイエー、98年阪神に入団。同年引退。通算89試合、8勝7敗1セーブ、防御率4・31。現役時代は189センチ、88キロ。右投げ右打ち。