第103回全国高校野球選手権の各地方大会が、まもなくスタートする。コロナ禍の苦しい環境下でも、全力で野球に取り組んできた球児たち。それぞれの思いを抱いて迎える2年ぶりの夏が、やってくる。

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町田工(西東京)のグラウンドには“手作り”の防球ネットがある。小松雄一監督(38)が「ありがたい。普段の学校生活を大切にすれば見ている人は見ているんだよと教えられた」と感謝する練習の相棒。昨冬、野球部を応援しようと機械科の先生と生徒がタッグを組んで、L字形を2枚制作してくれた。言われなければ販売品と思ってしまうクオリティーだ。

打球から守ってくれるだけでなく、ナインの心を奮い立たせてくれる存在だ。自身も機械科で学ぶ金田唯斗主将(3年)は「感謝しかないです。サポートしてくれる方たちのためにも頑張りたい」と力を込める。

この夏を迎えるまでは紆余(うよ)曲折があった。昨秋の都大会予選前の部員はわずか5人。他校と連合チームでの参加も検討されたが、部員たちは「自分たちのチームで出たいんです」とこだわった。小松監督は「各部活に頭を下げてお願いに回りましたね」と振り返る。必死に勧誘し、4人の助っ人が加入。1回戦で敗れはしたが、単独チームでの参加を果たした。

今春はコロナ禍の中でSNSを使って積極的に活動内容を発信。毎朝、正門で勧誘ビラ配りもし、1年生5人が入部した。総勢10人の町工野球部。機械科のバックアップも支えに1勝をつかみ取る。【阿部泰斉】