熊本大会は、降雨延期の影響で1日遅れて開幕を迎えた。昨年7月に記録的な豪雨で甚大な被害を受けた八代清流が3-2で小川工を下し、初戦を突破。エースの中田大誠投手(3年)と藤吉莉玖投手(2年)の両右腕が2失点で粘り、接戦を制した。昨年の独自大会を除けば、夏の大会で初戦突破は同校初。演歌歌手で地元八代市出身の八代亜紀(70)が作詞・作曲した校歌を、夏空に響かせた。

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鮮やかな逆転劇で、八代清流が初戦を突破した。1点リードの6回に、エース右腕の中田が2点を失ったが、すぐに流れを引き戻した。直後の攻撃で中田が1死一塁から左前打。「どんなことでもいいから、自分が塁に出て逆転できるように打とうと思った」と、1番岩本琉大外野手(3年)の逆転打を呼んだ。

中田は7回1/3を6安打2失点で降板。2年生右腕の藤吉にバトンを渡した。「完投したかったけど、うちには藤吉がいる。任せようと思いました。6回から全力で抑えにいきました」。サイドスローで最速137キロを計測する後輩にマウンドを託し、接戦を制した。山崎清貴監督も「今年は中田、藤吉が軸。藤吉は秘密兵器です」と、両右腕に信頼を置く。

昨年の7月、熊本県は中記録的な大雨に見舞われた。八代清流の近くを流れる球磨川も氾濫。グラウンドのそばにある排水溝が詰まり、約5メートルの水が噴きあがって野球場は浸水した。中田は「野球ができるのは当たり前じゃなかったんだ」と、目を疑った。水を取り除いても、フナ、コイ、マムシなどの死骸が散乱。片付けなどで約1カ月練習ができず、バッティングセンターで汗を流す日もあった。

中田は「野球を楽しんでやろう」と誓い、同校初の1回戦突破をけん引。地元八代市出身の八代亜紀が作詞・作曲した校歌を、夏空に響かせた。今夏は静岡県が豪雨被害に苦しむ。中田は「みんなで助け合って、乗り越えてほしいです」と願った。【只松憲】

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