2年分の思いを込めた1勝だ。青山学院(東東京)は、タレント中山秀征(53)の次男・脩悟主将(3年)がエースで4番。立志舎打線を散発6安打に抑える完封勝利を挙げ「去年、出られると思って練習していたので悔しかったです。切り替えて、秋、春を見据え、チームを引っ張ってきました。本当にうれしい」と、さわやかに言った。

昨夏の独自大会は、コロナ禍で学校が出場辞退を決めた。2年ぶりの夏初戦。最速138キロ右腕はピンチを抑えるたびに激しくガッツポーズした。5回には内野安打で一塁へ頭から滑った。投手であることはお構いなし。「(エンゼルス)大谷選手を見たら分かります。9人全員で勝ちたい」と全てに力を出し切った。

スタンドの父も、ピンチを脱するたびにガッツポーズした。「遺伝的なものがあるんですかね」と、息子は照れ笑い。この日の朝「去年の夏、出られなかった分、運をためている。自信を持って行きなさい」と送り出された。「勝ったよ、と報告します」と声を弾ませた。帽子のつばの裏には「前代未聞」と書いた。コロナで甲子園が消えた前代未聞の世代。甲子園に出れば、同校では前代未聞の出来事となる。【古川真弥】

○…応援を終え、球場を離れた中山秀征は「ほっとしました。公式戦で勝つのを見るのは、初めてだと思います」と笑顔で話した。ただ、昨夏の出場辞退に触れると「選手たちは、つらい思いをして過ごしてきました。本当に、よく頑張りました」と目に涙をためた。息子の自主トレ相手になったこともあるという。「キャッチボールは、もう捕れません」とわが子の成長を、うれしそうに語った。