文星芸大付は背番号「20」の2年生右腕が4強進出の原動力となった。入江奏投手が今大会初登板初先発で9回1死まで投げ、4安打無失点。打線の援護がない中、カーブを交えた緩急で得点を与えず、延長10回での勝利につなげた。116球を投げ「自分の中では100点満点の投球ができました。ピンチで、しっかり抑えられました」と笑顔で振り返った。

身長174センチ、体重67キロの体をフルに使った。セットポジションで構え、左足をグッと胸の高さまで引き上げてから投げる。「球速が欲しいと思って。(ロッテ)佐々木朗希投手は足を高く上げることで、位置エネルギーを使っているという記事を見ました」と、高校時に最速163キロを出した右腕にならっている。

1年の春が終わった頃だった。「投げ方を見失いました」。プロ野球選手を参考にしようと模索。そこで目を留めたのが、佐々木朗希の投球フォームだった。左足を高く上げる動作は負担もかかる。股関節周りの柔軟を入念に行い、練習前のアップでは欠かさず足を上げる動作を繰り返す。1年時の122キロから、今は132キロと球速アップ。効果は出ている。

高根沢力監督(47)は「どの投手にしようか、ずっと悩んでたんですが、入江が一番元気だった」と起用のわけを説明した。得点を取られたら代えるつもりで、初回から他の投手に準備させていた。そうしたら、あれよ、あれよと9回まで来た。1死から一、二塁となり交代したが「大崩れせず、粘り強く投げてくれた」とねぎらった。

佐々木朗希は、今季1軍デビューを果たし、プロ初勝利も挙げた。入江は「すごい。自分も将来、上のステージで勝てる投手になりたい」と目を輝かせた。もちろん、将来の前には、目の前の大会がある。甲子園まで、あと2勝だ。