センバツ8強の智弁学園が“足攻め”で3戦連続5回コールド勝ちを決め、通算20度目の夏の甲子園にあと2勝に迫った。9安打で3敵失に5盗塁を絡め、一条を一気に追い込んだ。

高校通算35発、DeNA、オリックス、千葉ロッテと3球団のスカウトがチェックに訪れたスラッガー・前川右京(3年)は1番に入り、初回に二塁強襲安打を放った。「打った瞬間“やばい”と思ったけど、二塁手がはじくのが見えて」。気づけばヘッドスライディングで出塁。土まみれのユニホームで、先制のホームを踏んだ。

「監督さんが考えた“勝つための打順”です。何でもいいから出塁する。打つべきボールをしっかり打つだけです」。この夏は初戦の2回戦が本来の3番、3回戦、この日と1番に入った。3戦で6打数4安打、ノーアーチ。主軸で一発-との思いはあるが、自然とフォア・ザ・チームの意識が優先する。何より走れる。センバツ後に88キロだった体が今は84~85キロ。飛距離は落ちず、体が軽い。

「走る智弁」は前川だけじゃない。2番谷口綜大(3年)は大きめの中飛で、一塁から二塁にタッチアップした。5番に入った捕手の植垣洸(3年)が3盗塁。夏の3試合でチーム盗塁数は14個となった。誰でも隙あらば走る。

「走塁のことはしつこく言います。当たり前のことを当たり前にやらないのが、嫌です」と小坂将商監督(44)。春の近畿大会で二塁打を打った選手がガッツポーズをして喜び、進めた三塁を逃したのを見て、交代させた。「カバーや走塁のミスを1人でもやると“あのチームは…”と見られます。だから全員ができないとダメです」。隙を作らない。指揮官の掲げる勝負事の鉄則がナインに浸透しつつある。

高校通算15号の2ランを放った4番山下陽輔(3年)は「チャンスを作って、足でかき回す野球ができた。そこは良かったと思います」と言った。小坂監督は「走塁でいくつか問題があった。それじゃあ次のステージ(準決勝以降)は通用しない」と辛口採点した上で「ちょっとずつ良くはなってます。打線につなぐ意識もあるし、そこは褒めたいです」-。準決勝は奈良大付戦。智弁学園が本調子になってきた。