作新学院(栃木)が“切り札”の一打から夏の県大会10連覇を決め、16回目の甲子園切符をつかんだ。1回に先制を許したが、3回に代打・戎響葵(えびす・ひびき)外野手(3年)の2ランで逆転。5回に同点に追いつかれるも、7回に相手の暴投で勝ち越した。最後まで流れを手放さず、接戦を制した。

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背番号「17」が、しっかりとバットを振り抜いた。1点を追う3回無死一塁。代打・戎はカウント3-1からのチェンジアップを捉えた。右翼席へ運ぶ会心の2ラン。序盤で流れを引き戻す1発となったが「内心はうれしかったですけど、試合中なので笑顔は出ませんでした」と引き締まった表情のまま、ダイヤモンドを1周した。

猛省からの一打だった。今大会は2回戦栃木戦、準々決勝那須拓陽戦に代打出場し、2打数2安打1打点。切り札として結果を出してきたが「昨日(の練習)は全然(球を)捉えられなかった。ふがいない練習をしていました」。それでも勝負強さを買う小針崇宏監督(38)からはベンチ入りを伝えられ「『練習のようなスイングはしません。明日は1球で仕留めます』と宣言しました」と自らにカツを入れ、試合に臨んだ。小針監督は「昨日の宣言どおり。おとこ気の一打です」と、勝負どころで仕留めた姿をたたえた。

黙々とバットを振ってきた。自信のある打撃で勝負するため、練習後に3時間、帰宅後も振り込んだ。スイングを磨いてつかんだ初の公式戦ベンチ入り。戎は「本音を言えばスタメンで出たいですけど、ようやく与えられた自分の役割。今はチームのために貢献することを考えています」と言った。県大会10連覇でつかんだ甲子園。「代打で出場する機会があれば、百発百中の心構えで臨みます」と宣言した。

小針監督は「10連覇よりも(コロナ禍で甲子園が中止となった)去年の選手の分まで、今年の選手たちが頑張ってくれたことが何よりうれしい。たくましいチームになりました」と晴れやかな表情で言った。レギュラーも控えもない。一丸で甲子園に乗り込む。【関根直人】