鹿島学園(茨城)が、常総学院を破って悲願の甲子園初出場を決めた。エース右腕の藪野哲也投手(3年)が、多彩な変化球を操り被安打4の2失点で完投。初回に奪った3点を守りきった。元日大監督の鈴木博識監督(71)は日大藤沢(神奈川)時代以来、指導者として26年ぶりの聖地となる。常総学院の島田直也監督(51)は指導1年の節目を飾れなかった。

◇  ◇  ◇  

少しバランスを崩した藪野は、三塁側へ歩きながら拳を握りしめた。1点差に迫られた9回2死二塁。カウント1-2から、低めのカットボールで空振り三振に仕留めた。「最後だから腕を振って投げようと思って力を入れすぎて、体がブレました」。文字通り、こん身の決め球で締めた。

キレのある直球と3種類のスライダー、カットボールとチェンジアップを操り、常総打線を封じた。「テンポをゆっくりにして、慌てずに。楽しいことをイメージして投げられた」と笑った。大会期間中、高久塁捕手(2年)、岡部真洋部長(40)と勝負の神様をまつる地元の鹿島神宮を参拝。パワーをもらっていた。

9回に入る前、鈴木監督は「簡単に甲子園には行けないよ。甲子園は逃げていくよ」とナインに伝えた。日大藤沢の監督時代に甲子園に出場し、日大監督では戦国東都でリーグ優勝2度。経験豊富な指揮官は、選手を引き締めることを忘れなかった。就任6年目で初優勝し「最高です。藪野の投球が3年間を象徴していた。自信にあふれていて、すごかった」と称賛した。

「戦いの5則」を、聖地でも披露する。入部すると鈴木監督から贈られる教本に記されている心得。試合前の円陣で、甲斐竣介主将(3年)が叫ぶ。

(1)いかなる場面でも冷静な判断力

(2)何事も準備を怠らない

(3)強い相手ほど向かっていく闘志

(4)ここ一番で発揮できる力

(5)この試合が最後だ悔いを残すな

つらかった練習も、春の県大会2回戦敗退も、すべては甲子園へ続いていた。甲斐は「茨城の代表として、甲子園に行けない89校の選手にも感動を与えられるような試合がしたい」。自覚を胸に、聖地へ向かう。【保坂恭子】