県岐阜商が市岐阜商に逆転勝ちし、9年ぶり29回目、2季連続の甲子園切符を獲得した。2-3の8回2死二、三塁。5番中西流空(りく)外野手(3年)が左前に2点適時打を放って逃げ切った。1936年(昭11)以来、85年ぶり2度目の深紅の優勝旗奪取へのスタートラインに立った。

   ◇   ◇   ◇

5番中西の執念の一打が勝利を引き寄せた。1点を勝ち越された直後の8回だった。無死満塁で4番高木翔斗捕手(3年)は痛恨の三ゴロ併殺。2死二、三塁で中西は「いつも高木に助けられてきた。責任を背負わせないように、追い込まれたけど来た球を強く振ろうと思った」。ファウルで3球粘り、カウント2-2からの6球目直球を見逃さず、左前に運んだ。2人が生還して逆転。笑みがはじけた。

僚友が運んでくれた勝利を主将の高木もかみしめた。「8回は情けない打席だった。センバツの悔しさを晴らして、甲子園ではいい報告をできるようにしたい」。2回には先制ソロで勝利への扉を開けていた。「バットコントロールには自信がある」と、岐阜大会前にノーステップ打法に変更し、ロングティー打撃でパワーもアップ。公式戦20号、今大会3号に聖地で打棒爆発への手応えも得た。

県立VS市立の「岐阜商」対決。夏の決勝で実現したのは36年ぶり3度目で、県岐阜商が85年以来の3勝目を挙げた。18年から指揮する鍛治舎巧監督(70)も「岐阜県大会8強は大垣日大以外が公立高。その集大成が決勝だった。公立の復権になった」と就任後初の夏の甲子園切符を感慨深げに語った。秀岳館(熊本)監督時代には16年春から3季連続で甲子園4強だったが、今春のセンバツでは1回戦敗退だった。「打って打って打ちまくる試合ができるようにしたい。残り10日ほどで、打撃を鍛え直す。戦後初の岐阜県勢優勝を飾るつもりで戦う」。名伯楽が聖地での必勝を誓った。【伊東大介】