愛工大名電が享栄投手陣を攻略し、18年以来3年ぶり13度目の夏の甲子園切符をつかんだ。雷の影響で1時間49分、試合が中断する異例の展開。1点を追う5回に打線が打者12人の猛攻で一挙6得点を挙げた。2回から登板のプロ注目の田村俊介投手(3年)、寺嶋大希投手(3年)らの継投で、8-5で逃げ切った。

愛工大名電の打者が鮮やかにつながり、「線」になった。1点ビハインドで迎えた5回1死一、三塁。利光真之介外野手(3年)が左翼に同点の適時二塁打を放った。これが優勝へのファンファーレになった。続く伊藤基佑内野手(2年)の打席で暴投による勝ち越し。享栄の最速151キロを誇る竹山日向投手(3年)をKO。1死満塁にチャンスを広げると、4番宮崎海外野手(3年)の右前適時打などで加点。打者12人の猛攻で一挙6得点を奪い、試合の主導権を握った。

宮崎は「真っすぐがこれまで見た中で一番速かった」と言いながらも、享栄竹山から2打席目に右二塁打を放つと、6回にも適時三塁打。本塁打が出ればサイクル安打という3安打2打点の活躍だ。「迷うことなく自分のスイングをすることを心がけた。打点を挙げる4番の仕事ができた」と胸を張った。

天も味方した。2点を先制され1回を終えた直後に雷雲が接近。1時間49分の中断後に試合が再開された。倉野光生監督(62)は「天の恵み。あそこで流れが変わった。選手が冷静になれた」と振り返る。

中断のタイミングで先発野崎健太投手(3年)から田村俊介投手(3年)にスイッチ。6回からは準決勝、準々決勝を連投した寺嶋大希投手(3年)まで投入し、享栄の反撃を3点で抑え、3点差で逃げ切った。「9回最後まで抑えきるのは苦しかった」と指揮官は話した。18年以来3年ぶりの甲子園は、監督歴20年を超す名将にとっても厳しい道のりだった。

準々決勝から東邦、中京大中京、享栄の「私学4強」との直接対決を制し、頂点に立った。倉野監督は「いかに心を1つにして戦うことが大事かが分かった。愛知の思いを胸に甲子園でいい戦いをしたい」。ライバルとの死闘を力に変え、初の夏の甲子園制覇へ挑む。【伊東大介】