<高校野球大阪大会:大阪桐蔭4-3興国>◇決勝◇1日◇大阪シティ信用金庫スタジアム

興国が「西の横綱」に仕掛けた逆襲に球場がどよめいた。1-3の9回にそれまで2安打の打線が4安打集中で2点差を追い付いた。しかし、その裏。主将の山下健信捕手(3年)はサヨナラの打球をマスク越しに見送った。「ここを勝ちきって甲子園に行くぞという気持ちだった。このバッターを仕留めて勝ちにつなげようという思いだった」。幕切れは2死三塁から。申告敬遠で塁を埋める選択肢もあったが、逃げないチーム方針で真っ向勝負を貫き、初球を仕留められた。

2年の冬。山下主将は仲間に思いをうまく言葉で伝えられず悩んだ。喜多隆志監督(41)に「今を頑張るのも大切やけど、今後の興国硬式野球部に残せるものを作れ」と言われ、その後はあいさつ、返事など率先した。行動で大阪桐蔭の約2倍にあたる118人の大所帯を引っ張った。決勝は、準決勝で死球を受けた右ふくらはぎに痛みを抱えたまま出場。仲間に声を掛け3投手をリードし、1回と5回には盗塁を刺した。

46年ぶりの甲子園出場の夢は打ち砕かれた。「悔しいです。感謝の気持ちでいっぱいの喜多先生を甲子園に連れて行けなくて申し訳ないです」。悔いる山下に指揮官は優しい表情でねぎらった。「人間的に信頼を置けるキャプテン。だからこういう良いチームになった。ありがとう、お疲れさまと言いたい」。【三宅ひとみ】