雑誌「静岡高校野球」編集人・栗山司氏(44)が、県内アマ野球の魅力をお伝えする連載「ここに注目!」の第2回です。秋季高校野球地区大会が20日から県内各地で始まります。本年度の高校2年生は、最速147キロ右腕の吉田優飛(静岡)を筆頭に、スケールの大きな選手がそろっています。野手のイチオシは勝又琉偉内野手(富士宮東)。無名の公立校に、ダイヤの原石が眠っていました。

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今夏の静岡大会、横須賀と対した7月10日の1回戦。勝又は、相手の外野手がフェンス近くまで下がる中で3打数無安打に終わり、チームは0対10(7回コールド)で敗れた。「夏はかなり悔しくて、秋は必ず結果を出したいと思っています」。身長184センチの大型遊撃手は力を込める。

高校入学後、1年夏から「4番ショート」として公式戦に出場。長いリーチを生かしたスイングで外野の間を破り、現時点までの通算打率は3割5分を超える。守備は柔らかいハンドリングで軽やかに打球をさばき、肩も強い。50メートル5秒8の脚力も光る。小学校時代から常に運動会の短距離走で1位だった。

指導する大勝良則監督(54)から「元々はとても謙虚な子で、誰かの後ろにいるようなタイプだったが、ようやく自分の可能性に気付き始めてきた」と期待されている。高校入学時に58キロだった体重は、現在71キロに増量。「自分の限界を超えるまで追い込んだ」という冬場のトレーニングに加え、1日7回に分けての食事でパワーアップした。

夏の敗戦後は、翌日から練習を開始。主将にも就任し、自ら率先してバットを振り込んできた。「将来はプロ野球選手になりたい」と目標は明確。米大リーグのフェルナンド・タティス内野手(パドレス)に憧れる未完の大器が、夢に向かって羽ばたく。

○…富士宮東野球部は、今年で創部30周年。2014年以来、7年ぶりの秋季県大会出場を目指す。中心となるのは、1年時から出場する2年生のメンバーだ。最速134キロのエース右腕・久能樹音(じゅん)は「3年生の思いを背負って甲子園に出たい」と意気込み、パワーヒッターの大谷陸斗は「チーム打撃で貢献したい」と気持ちを高ぶらせる。21日の東部地区大会初戦で、伊豆総合・熱海・御殿場の連合チームと対する。

◆勝又琉偉(かつまた・るい)2002年(平14)10月7日、富士市生まれ。7歳の時に「大淵少年野球スポーツ団」で野球を始める。大淵中では、2年秋の県中学新人大会で県ベスト4進出に貢献。富士宮東高では1年夏からレギュラー。184センチ、71キロ。右投げ右打ち。