万全の左右両腕リレーで頂点に立った。53年ぶりの北北海道勢決戦は、クラークが旭川実に3-1で競り勝ち、秋の全道初優勝を飾った。

先発した背番号3の右腕辻田旭輝(あさひ、2年)が5回1/3を1失点、継投した背番号1の左腕山中麟翔(りんと、2年)が2回2/3を無失点、9回途中から辻田が再登板し、昨秋準優勝の難敵を1点に押さえ込んだ。初の明治神宮大会(11月20日開幕、神宮)出場権を獲得し、来春のセンバツ(来年3月18日開幕、甲子園)切符も最有力となった。

 

晴れわたる円山の空に雄たけびが響き渡った。9回2死一塁、クラーク辻田は自ら投ゴロを裁くと高々と右手を掲げ、麻原捕手と抱き合った。地区から8試合でわずか6失点。全道では5試合中4試合が1失点で、最多でも2回戦(北海戦)の2失点と、安定感のある投手陣がけん引役となった。試合を締めた辻田は「山中がいなければ僕もここまで頑張れなかった」。優勝の瞬間を左翼で迎えた山中は「辻田は速さ、僕は変化球。互いの良さを生かしあえた」と喜んだ。

今夏の北北海道大会は初戦敗退。佐々木啓司監督(65)は「精神的な問題」と8月上旬、意識改革のため、帯広で合宿中の強豪亜大の練習見学にチーム全員で出向いた。辻田は「少しのミスでも声を出し指摘しあう。そういう厳しさが足りないと感じた」。山中は「体の大きさの違いを見て情けなく感じた」。昨夏は独自大会で北大会優勝。与えられたメニューをこなせば強くなれると錯覚していた選手たちの目が覚めた。

歴戦の将、佐々木監督自身もスタイルを微調整。創部3年目の16年夏に甲子園初出場。18、19年夏は2年連続で北大会準優勝と、あと1歩でチャンスを逃した。前任の駒大岩見沢時代、破壊力ある“ヒグマ打線”を生み出したが、この数年は猛打だけでなく、好投手を複数育て、少ない得点で競り勝つ野球も突き詰めてきた。「いい投手は、なかなか打てない。しっかり得点圏に走者を進めないとね」。決勝の5犠打3盗塁含め、全道5戦で19犠打4盗塁と小技、足技を絡め加点し、小刻みな継投も駆使し、難敵を連破していった。

大きなタイトルをつかみ、プロスキーヤー三浦雄一郎校長の89歳の誕生日に花を添えた。辻田は「節目の日に初優勝をプレゼント出来て良かった、次はまだ果たせていない甲子園での1勝を目指したい」。新たな大志を掲げ、春の大舞台へ準備を整える。【永野高輔】

○…1番打者の白取主将が2安打1打点と流れを呼び込んだ。1回右前打で出塁し、麻原の適時打で先制のホームを踏むと、1点差に迫られた7回1死二塁では左翼線に適時打を放ち、貴重な追加点をもたらした。「監督さんの(逆方向へという)指示通りうまく打てた。チーム一丸で甲子園1勝を」と目標を定めた。

▽スタンドで観戦したクラーク・三浦校長 これからもさらに努力を重ねて、目指せ日本一!皆さんの勇姿を観られたこと、そして優勝が最高のプレゼントです。おめでとうございます。

▼クラークが2年ぶり3度目の出場で秋全道初優勝を飾った。過去2度はともに初戦敗退で、1回戦(駒大苫小牧戦)の初勝利から頂点に駆け上がった。夏の北北海道大会は5度の出場で、創部3年目の16年に初優勝を果たし18、19年は準優勝。20年の道高野連独自大会でも優勝。春全道は3度の出場があり、今年のベスト4が最高成績。

◆クラーク 正式名称はクラーク記念国際。92年4月に設立された全国1万人以上の生徒が学ぶ広域通信制高校。深川本校にある野球部は14年4月創部。創部3年目の16年夏の甲子園出場。初戦(2回戦)で聖光学院(福島)に3-5で敗戦。現部員は2年13人、1年12人の計25人。主な卒業生にソチ五輪スノーボード女子パラレル大回転銀メダルの竹内智香。深川本校の所在地は深川市納内町3の2の40。三浦雄一郎校長。