春の切符を懸けた戦いの火ぶたが切られる。来春センバツ出場校の重要参考資料となる秋季東北大会(宮城)が20日に開幕。東北の雄・仙台育英(宮城1位)が大会3連覇を目指す。

183センチの長身右腕・鈴木晶太投手(2年)が背番号「18」で初のベンチ入り。チームを勝利に導く決意を示した。2回戦から登場し、学法石川(福島3位)と夏の甲子園16強入りの盛岡大付(岩手3位)の勝者と激突する。

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みちのく3連覇で春のセンバツ出場を目指す仙台育英は長身右腕・鈴木が台頭し、ブルペン陣に厚みが増した。今回、初のベンチ入りを果たし、高鳴る鼓動を抑え、静かに闘志を燃やしている。「チームの勝利に貢献して、結果を出す」と力強く宣言。183センチの長身から放たれるキレのある直球と多彩な変化球で打たせて取る投球術が持ち味。みちのくの強打者たちを翻弄(ほんろう)する。

背番号をもらうまでの、道のりは険しいものだった。選出された責任感、自覚がある一方で、こみ上げる喜びも、ひとしおだった。「素直にうれしい気持ち。高校に入学して苦労する部分が多くて、全然うまくいかない中、ずっとやってきて、やっと報われた瞬間でもあった」。軟式野球の名門・上一色中(東京)出身。今秋ドラフトでDeNAから5位指名を受けた専大松戸・深沢鳳介投手(18)は1学年上の先輩にあたる。鈴木は「(深沢さんは)中学から尊敬する憧れの存在です。自分は中学卒業後『挑戦したい』の思いが強くて、名門で自分の実力がどこまで通用するのか、試したかった」と春夏通算28度の甲子園出場を誇る強豪の門をたたいた。

熾烈(しれつ)を極めるレギュラー争いに加わることができなかった。「育英投手陣」の層の厚さは全国屈指。細身な体格のせいでボールに力が伝わらず、結果を残せない日々を過ごした。手応えをつかんだのは、新チームになってから。全体で取り組む毎晩2合の白米を平らげる食事トレーニングで、体重は入学当初から4キロ増の73キロに。まだまだ発展途上だが、直球の質が変わり、勝負球にも磨きがかかってきた。「体重が増えてきて少しずつ結果も出てきた」。

左投手の台頭が発奮材料になった。盤石な試合運びで優勝を飾った県大会のベンチ入り投手は5人全員がサウスポーだった。鈴木は「悔しかった。右の投手陣で『東北大会では2人以上はベンチ入りしよう』と話していた。今回は自分が選ばれたので、(みんなの)思いも背負ってマウンドに上がりたい」と決意を口にした。須江航監督(38)は「(各県の代表チームが)左対策をしてくると思いますが、右(鈴木)もいます。面白い存在です」とにやり。大きな期待を寄せている。

チーム目標は一貫して、ブレることはない。東北勢悲願の日本一だ。鈴木は「自分に与えられた役割を、しっかり果たして、チームの優勝に貢献していく」。成長曲線を描き始めた右腕が、東北V3へのピースとなる。【佐藤究】