マスターズ甲子園2021が4日、兵庫・西宮市内の甲子園で行われ、御所実OB(奈良)で今大会最高齢の高橋寛さん(86)が奮闘した。能代OB(秋田)で、阪急のサブマリンエース山田久志さん(73=日刊スポーツ評論家)と対戦し、空振り三振を喫した。

通算284勝の大投手との対戦だ。「山田選手の球を打ちたいと昨日の晩から思っていました。見事な空振りでした。打てなくて情けない。4球も投げてもらって満足。思い残すことはありません」と笑顔で振り返った。

高橋さんは戦前の1935年(昭10)生まれ。太平洋戦争中は満足に野球をできなかった。国民学校4年生時に終戦を迎えた。

「少年時代、甲子園に行くのが夢やった。終戦直後の生徒。スポーツは野球しかありません。みんな野球をやって甲子園、甲子園と。高校時代の夢をかなえた」

プロ野球金星スターズ(後の大映ユニオンズ)にゆかりがあった御所に育ち、53年に春夏の甲子園に出場。センターで4番打者だった。同校は春夏通算11度の甲子園出場。初出場のメンバーだ。

卒業後は社会人野球の積水化学でプレーし、都市対抗にも出場した。軟式クラブチームで国体に10度出場するなど野球を愛する人生だ。この大会出場に備え、約1週間、1日50スイングの素振りで体を作ってきた。夫人ら家族の前で、かくしゃくたる勇姿を見せた。

「68年ぶりで青春の思い出。感慨無量です。86歳で甲子園の土を踏めた。冥土の土産ができました」

また1つ、白球を追い続けた人生の「勲章」ができた。【酒井俊作】