大垣日大が「祖父孫鷹」で会心の勝利を挙げた。77歳10カ月の阪口慶三監督が胸を熱くしたのは2回だ。2死二塁。7番高橋慎内野手(2年)が放ったライナーを二塁手がはじく。先制適時打になった。かつて鬼と恐れられた名将がおじいちゃんの顔になった。

「すごく感激して、うれしかった。あとで頭をなでてやろうかなと思います」

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勝負で非情に徹する。試合前に「機動力を使って、バッテリーをじらそう。集中力を走者に行かせるように」と指示。東邦(愛知)時代はセンバツ優勝。甲子園33度目の経験がある。2回、高橋の快打を呼んだのは直前の二盗だ。初出場の只見をしたたかに攻めた。

阪口監督の長女の三男が高橋だ。幼い頃「じいちゃんと甲子園を目指すぞ」と言われた。小学1年から愛媛・松山で暮らした。愛知の実家を訪れては公園で素振りを見てもらった。いまは甲子園を目指す師弟関係だ。「もっと太らないかん」。明るい性格で「周りに声掛けしろ」と言われた。三塁から声を張り続けた。

昨秋は東海4強だったが“逆転選考”された。甲子園入り後はミーティングなし。「まったく甲子園を意識させないように」と阪口監督。高橋も「めちゃくちゃ楽しみました」と笑う。祖父に甲子園通算39勝目をプレゼント。魂の野球を見せつけた。【酒井俊作】