仙台育英が東北を9-5で下し、中部地区優勝を決めた。3回から2番手で登板した鈴木晶太投手(3年)が4回1失点の好投。この春から公式戦デビューを果たした遅咲きの最速143キロ右腕が今後への自信と課題を得た。東陵は昨秋の県大会1回戦で敗れた佐沼に9-2の7回コールドで東部地区優勝。熊谷颯斗主将(3年)が4安打4打点と打線をけん引した。聖和学園、塩釜が県大会に名乗りを上げた。春季宮城県大会は14日に開幕。上位2校が春の東北大会(6月7日開幕、福島)に出場する。

鈴木に「納得」の2文字はなかった。8-2の6回2死。カウント1-2からの5球目。力のある直球で空振り三振に仕留めると、淡々とした表情でベンチに下がった。3回から2番手でマウンドに上がり、4回を投げ2安打1失点。堂々の好投にも自己評価は辛口だった。「課題の残る内容でした。まだまだ見直さないといけない部分がある」。さらなる高みを追い求めるからこそ、そう簡単に満足はしない。

3回、先頭打者に対してカウント2-2と追い込んでから死球を与えた。先頭打者を出塁させるのは厳禁と肝に銘じていた。打者一巡の猛攻で6得点を挙げた直後の5回1死からは、2連打と犠飛で1点を許した。「先頭の死球もですし、点を取った直後は3者凡退に抑えないと、完全にリズムをつかむことはできない」と改善点を挙げた。

大きく振りかぶり、高く左足を上げる。投球動作で勢いをつけ、投じる球に力を伝える。低めに制球された直球には力があり、4回には2者連続三振をマーク。昨秋にセットポジションからワインドアップに変更したことで、自らの強みである真っすぐがより生きるようになった。「ボールに勢いが出るようになって、低めにも強さが出てきた」と手応えを口にした。

花開く時がきた。公式戦デビューは16日前の1回戦だった。「入学して公式戦のマウンドに立てるまで、長かったです」。中学軟式野球の強豪・上一色中(東京)出身も、春夏通算41度の甲子園出場を誇る名門の壁は厚かったが、ひたむきに努力を続けてきた。入学当初128キロだった球速は、最速143キロにアップ。着々と力をつけてきた。「支えてくれる家族への感謝の気持ち、甲子園のマウンドに立ちたい夢があるからこそ、諦めずにやってこれた」と力の源を明かした。遅咲きの右腕が最終学年で大輪の花を咲かす。【佐藤究】