履正社が過酷なナイター明けのデーゲームを制し、決勝進出だ。

前夜は午後9時28分に、大商大堺に勝利。関係者も記憶にない“大阪史上初”の戦いだった。この日は午前9時57分にプレーボール。その直前、多田晃監督(43)はナインに伝えた。「昨日の試合は関係ない。自分たちの野球をやろう」。試練とも思わない。目の前の戦いに集中した。

先手を取った。4回1死二塁。午前10時34分に佐々木琉登内野手(3年)の右中間適時三塁打で口火を切った。プロ注目の光弘帆高内野手(3年)もライナーで右翼線へ。適時二塁打でこの回2点目を奪った。光弘は「昨日の試合は昨日の試合、今日の試合は今日の試合。全員、切り替えられた」と言う。中盤の6得点で逃げ切った。

「中12時間半」の試合はプロ野球にもない、ハードさだ。例えば1軍戦は午後9時半に試合終了しても、翌日のデーゲームは早くても正午をゆうに超える。ましてや、成長過程の高校生だ。過密日程の過酷さがあった。前夜、光弘が神戸の自宅に帰宅したのは午後11時過ぎだった。親との帰路で補食を取った。入浴、ストレッチ…。ナインは入念なケアで臨んだ。周囲の心配をよそに光弘は平然という。「(普段)練習も遅くまでしている。いつもと一緒。気にしてません」。先発野手8人は前夜と同じ。2年生サウスポーの福田幸之介投手も7回まで1安打無失点の好投で貢献した。午前11時57分に疲れ知らずの快勝を演じきった。

17日に今春センバツ優勝の大阪桐蔭と決勝で激突する。この日、2安打の光弘は強気だ。「特別、差があると思わない。打つ野球をしっかりできれば戦える。秋、終わってから春の近畿優勝を目標にしてきた」。19年夏の甲子園優勝に導いた岡田龍生監督(60)が退任し、多田体制へ。新たに機動力を強化する。早くも効果が出て今大会6試合68得点。大阪桐蔭は昨秋の大阪府大会で敗れ、センバツ出場を断たれた因縁の相手だ。強力打線で無敵のライバルに挑む。【酒井俊作】