浜松開誠館(静岡1位)が、岐阜第一(岐阜1位)に7-2で快勝し、初出場初優勝を飾った。公式戦初先発の静内龍之介主将(3年)が7回途中3安打2失点と力投すると、打線も9安打7得点。投打がかみ合い、創部25年目で東海の頂点に上り詰めた。県勢としても、昨年春の掛川西、同秋の日大三島に続く3季連続優勝となった。

浜松開誠館5点リードの9回裏2死。2番手の山口祥吾投手(3年)が、最後の打者を遊ゴロに仕留めた。初の東海制覇-。しかし、派手なガッツポーズはない。ナインは表情を変えずに整列に向かった。佐野心監督(55)は「相手をリスペクトし、淡々とやり遂げたことがすごい。心の落ち着きは試合にも通じる」と、教え子をたたえた。

投打がかみ合った。静内が、1週間前に習得したフォークを決め球に躍動。自身最長の6回0/3を3安打2失点にまとめた。「力を入れる場面と抜く場面をうまく使い分けられた」。右腕の力投に打線も応える。1-0の5回に打者9人の猛攻で4点を奪うなど、9安打7得点で圧倒した。

昨年11月。指揮官は「全体練習の時よりも、少人数の方が盛り上がった」と、コロナ禍で強いられた制限を契機に方針を一新。個の向上だけに焦点を当てた。「勝ち、負けは指導陣が考えればいい。選手には、与えられた場面で能力を発揮することだけを考えさせた」。メニューは変えず、意識を変えさせた。

準決勝の4安打3打点に続き、決勝も7番以下の下位打線で5安打4打点を稼いだ。佐野監督は「過小評価していた。レベルが上がっている」と目を丸くした。静内も「1人1人が能力を発揮することで、チーム全体の力になった」とうなずいた。試合後の姿同様、「淡々」と己と向き合い、育んできた個の成長が栄冠につながった。

昨秋、県初戦の2回戦(1●5静岡商)で敗れたチームが、今春の公式戦は10戦全勝。静内は「これからも、やってきたことを貫いて甲子園を目指したい」と力強く語った。確かな手応えを胸に、初の聖地を目指す夏へ向かう。【前田和哉】