<高校野球兵庫大会:加古川西5-2関西学院>◇9日◇明石トーカロ球場

大阪、京都、滋賀大会などが開幕し、近畿の夏が本格化。京都大会では今秋ドラフト候補で、二刀流としても注目される京都外大西・西村瑠伊斗(るいと)外野手(3年)が高校51号を放つ活躍を見せ、洛北に圧勝発進した。兵庫大会では昨夏準優勝の関西学院が初戦で加古川西に敗れ、90年から同校を率いてきた広岡正信監督(68)が監督生活に別れを告げた。

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試合終了から2時間たっても、感謝を伝える教え子の列は途切れなかった。現役部員や駆けつけたOBが広岡監督を取り囲んだ。「本当に幸せでした。しんどいことも多かったですけど、甲子園にも行けて、たくさんの方が応援してくれて」。次々に差し出される手をしっかりと握り返した。

36年間の監督生活の集大成。「今日が最後になるかもしれない」と臨んだ昨秋県8強の加古川西戦で、3回に3点を先行されたが、指揮官は次々に代打を送り、ベンチ入り20人のうち18人を起用。終盤に突き放されたが、粘りを見せた。

銀行勤務を経て指導者となり、報徳学園中・高から母校の関西学院へ。部員100人前後の大所帯を毎年抱え、個性をほめて伸ばす指導に腐心。古豪を98年春、09年夏と甲子園に導いた。その指導を信頼し、元阪神八木裕氏、藪恵壹氏らプロ球界のOBが子供たちを預けた。今年は元広島新井貴浩氏の長男、亮規浩(あきひろ)内野手(3年)が3回から代打出場し、最後の打者に。4打数無安打の新井は「1つのことを徹底する、チームに貢献することを教えていただいた。自分が打てなくて負けて悔しいです」と肩を落とした。広岡監督は「本当に打つようになりました。練習の取り組みがいい。一生懸命体現する子を使いたい。いいものを見せてくれました」と見つめた。

チームを長男の直太部長(44)に託す。「無事にバトンを渡せました」と笑顔を続けたが、教え子に囲まれ、最後は泣いた。「勝ちたかったなあ…」。温和な表情の裏で、広岡監督はやはり勝負師だった。【堀まどか】