みんなで目いっぱい、神宮球場でのプレーを楽しんだ。初出場した品川翔英(東東京)は5回コールドで敗れたが、記念すべき1歩を踏み出した。野球部をつくった石田寛監督(34)は「感動しました。選手は楽しんでプレーしていて、あっという間でした」と満足げに話した。

「1アウト取ろう!」「頑張ろう!」。ベンチからも、グラウンドからも声が飛んだ。2、3回と9失点ずつ喫したが、選手たちは明るかった。

女子校から共学となり2年目。高木英寿内野手(2年)が、入学してすぐの自己紹介で「野球部をつくりたいです」と言ったところ、同じ思いを抱えていた石田監督がすぐに反応。同志も集まった。グラウンドがないため、バットを振る、ボールを投げるスペースもなく、できるのは筋トレくらい。同好会からのスタートだったが、2年で公式戦にたどり着いた。

真っ先に泣いたのは、監督だった。それも試合前のミーティング。「僕には夢が3つある。1つ目は神宮で試合をすること。2つ目は神宮でノックを打つこと。3つ目は勝つこと」。熱血教師と野球部員が甲子園を目指すストーリー「ルーキーズ」に憧れて脱サラし、教師になった異色の経歴を持つ監督の夢2つが、まさかの初戦でかなった。

ミーティングを聞いた高木は「自分もうるっときました。監督は、いつも熱を持って指導してくれる」。男子は全員1、2年生。夢の残り1つは、来年みんなでかなえる。【保坂恭子】