八丈が6年ぶりに夏の初戦を突破して白星をつかんだ。長短10安打で10得点。就任3年目の木村嘉尚監督(38)は「練習試合もできないチームが公式戦で勝てた。終了後にはウルウルきました」と涙を流さんばかりに喜んだ。

当初14日の試合予定が雨で2日間順延された。練習場確保もままならない中、前日15日の午後、ナインは木村監督を先頭に東京ドームシティのバッティングセンターを訪れた。バーチャル映像のプロ投手を相手に打てる人気スポット。「則本(楽天)を打ちました」。こう言ったのは2回1死二、三塁から先制の2点適時打を放った秋田充二塁手(3年)だ。

思わぬ練習に、初戦を前に緊張していたナインの気持ちも和らいだ。菊池絆主将(3年)は「最初の日はガチガチだったけど、2日間流れて、悪い緊張がなくなった。雨のおかげです」。リラックスすれば、力も発揮できる。走者が出ると走る走る。9盗塁。5回1死一、三塁では重盗を決め、7点目を挙げた。

ベンチ入り選手は12人だけ。島唯一の高校に練習試合の相手はいない。そこで島内の硬式野球経験者が集まり、実戦練習を手伝ってくれた。「皆さんに協力してもらい、重盗も練習してきました」(木村監督)。13日の出発の際、八丈島選抜(中学)の笹本義範監督から声をかけられた。菊池絆主将らが「離島甲子園」に出場したときの恩師だ。「誰に恩返しじゃなく、自分たちで楽しんでこい」。その言葉通り、八丈が初戦を突破した。【米谷輝昭】

○…八丈ナインは約300キロの距離をいとわず駆けつけた応援団に感謝のあいさつを行った。先発した菊池駿良投手(3年)の母・恵さん(50)は「興奮してもう何も。3年間で勝つのは初めてなんですから」と言葉を弾ませた。氷などを差し入れしてナインを見守ってきた。次戦は18日の予定だが、天候が不安定で先は見えない。恵さんは「このまま連泊します。でも今日の宿舎を探さないと」。終始笑顔で話していた。