20年夏を制した鶴岡東が、今春王者の羽黒を7-0の7回コールドと圧倒。土屋奏人捕手(3年)が3回1死三塁で中越えの2点本塁打を放ち先制。守備では終始落ち着いたリードで2投手を支え、羽黒打線を3安打無失点に抑え込んだ。

「絶対打ってやろう、初球からいこうと思っていました」。思惑通り、初球の外角直球を振り抜いた。土屋が「越えてくれ」と願った打球は、中堅手の頭上を越えてスタンドイン。笑顔もガッツポーズも忘れて、無我夢中でダイヤモンドを回った。土屋は「(本塁打は)気持ちで(スタンドへ)いったという感じでした。一生懸命走り過ぎて、入った瞬間はあんまり覚えてないです」と振り返った。3-0で迎えた5回には、6番小林昇一郎外野手(3年)からの3連続適時打で7-0とリードをさらに広げたが、選手らにガッツポーズなどはなかった。土屋は「みんな必死すぎて…。喜んではいるのですが、まだ次があると考えています」。最後まで気を抜かない全力疾走、全力プレーで、全員野球の神髄を見せた。

捕手としてはポーカーフェースで2投手を好リードした。「自分がいやな顔をしたり、焦ったりしたら、周りに伝わってしまう。とにかく落ち着いて、周りを安心させるのが捕手の役目だと思います」と土屋。扇の要としての心構えを胸に、羽黒打線をわずか3安打に抑え込んだ。

準決勝は中3日空いて22日に新庄東と対戦する。指揮官は「しっかり休養し、体調を整えて、日に日にレベルアップできるように準備をしていきます」と気を引き締めた。今大会は、今春王者の羽黒に加えて、昨夏覇者の日大山形、昨秋王者の酒田南もトーナメントから姿を消した。19年夏以来3年ぶりの聖地に向けて爪を研ぐ鶴岡東が、混戦の山形を勝ち抜く。【濱本神威】