48年ぶりに聖地に帰る! 盈進(えいしん)が27日の高校野球広島大会決勝で尾道を下し、約半世紀ぶりとなる甲子園の切符をつかんだ。初回に2点を先制。6回には同点に追いつかれたが、7回に勝ち越し。8回には打者一巡の猛攻で5点を奪い、尾道を突き放した。83チーム85校の頂点に立った盈進は8月6日に開幕する第104回全国高等学校野球選手権大会(甲子園)に駒を進めた。

   ◇   ◇   ◇    

歴史を背負った盈進ナインが歓喜の輪をマウンドで作った。おのおのが人さし指を立て、笑顔をはじけさせる。48年ぶり3回目の夏切符。山々に囲まれた球場に、温かく大きな拍手がこだました。

今大会6試合目の先発で5回1/3を3失点にまとめた向井勇(ゆうき)投手(3年)は「みんなのおかげでここまでこれた。勝てて良かった。甲子園でも1人1人丁寧に投げたい」と、早くも次なるステージに意気込みを見せた。

経験豊富な指揮官が古豪復活へ導いた。同校OBの佐藤康彦監督(47)は創価大を経て、社会人の王子製紙に入社。04年には内野手として出場した第75回都市対抗野球で全国制覇の経験もあり、「(経験が)プラスにはたらくかもしれない。普段と違う県で普段やらない相手とやる点」と、1度は経験した日本一を振り返る。引退後は王子製紙で営業部に所属する傍ら、当時の盈進監督・正田靖人氏(48=現盈進中軟式野球部監督)に誘われ、13年からボランティアコーチとしてバッテリーの指導にあたってきた。

その後同社を退社し、盈進に事務職員として採用された。ある種の“脱サラ”だが「怖さとかそういったものはなかった。OBとして野球に育ててもらって自分にできること、自分しかできないことがある」と胸に刻み、監督となった。就任から6年で広島大会制覇。「こどもたちが粘り強くやってくれた。(甲子園は)自分も初めてだし、よく分からない。(広島大会の)8試合目として準備したい」。あまたの強豪ひしめく舞台へ、引き締めた。

朝生弦大主将(3年)は「最後まで粘り強く、諦めず戦いたい。まずは1勝。初戦に集中したい」と、優勝の余韻に浸る事さえせずに冷静に次戦を見据えている。過去甲子園は74年の3回戦進出が最高成績。盈進の新たな歴史の1ページをナインが刻んでいく。【前山慎治】

 

◆盈進 1904年(明37)に男子校の盈進商業実務学校として設立した私立校。62年2月に現校名になった。89年から男女共学化。普通科からなる中高一貫校。生徒数は801人(女子368人)。野球部は1921年(大10)創部で部員77人。夏は今回が3度目の甲子園出場で春はなし。主なOBは阪神江草2軍投手コーチ江草仁貴、元阪急永本裕章。所在地は福山市千田町千田487の4。延和聡校長。