新潟代表・日本文理(3大会連続12度目)は長崎代表・海星(3年ぶり19度目)に0-11で敗れ、17年以来の県勢初戦突破はならなかった。

プロ注目のエース田中晴也投手(3年)は最速148キロをマークするが、新潟大会で負傷した右手人さし指のまめがつぶれ、本来の投球ができない。6回8安打7失点で無念の降板となった。打線は8安打し再三、得点圏に走者を置くが海星・宮原明弥投手(3年)からあと1本を放つことができなかった。

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最後の力を振り絞った。6回表2死三塁、田中は海星の9番宮原を投ゴロで打ち取ると三塁側の日本文理ベンチに向かってダッシュした。甲子園のマウンドに別れを告げた瞬間だった。7回からは高橋史佳左翼手(2年)にマウンドを譲り、一塁を守った。

6回に右手人さし指の皮がむけて出血した。ユニホームの右大腿(だいたい)部で血を拭う。この回29球を投じ、4連打を浴びて4失点。5回から違和感があった。万全ではないことを鈴木崇監督(41)に告げた。「力加減がよくなかった」。大黒柱の無念を受け止め、鈴木監督は降板させた。

力は見せた。1回、海星の2番田川一心三塁手(2年)の4球目に148キロをマーク。この試合の第1球を145キロの直球で入るなど、自己最速の150キロにこそ届かなかったが、大会屈指の剛腕の評判に違わない速球を披露した。ただ、それに耐える力は指先には備わっていなかった。

7月26日の新潟大会準決勝の北越戦でまめがつぶれた。決勝で帝京長岡に延長11回サヨナラ勝ちし、甲子園切符をもぎ取ってからは治療を優先した。8月2日に大阪入り後は本格的な投球よりも調整を重視。慎重に仕上げてきた成果は球速に表れ、4、5回は変化球主体の組み立てで3者凡退に抑えた。「2巡目からは組み立てを変える」と捕手の竹野聖智主将(3年)と考えたプランがはまりつつあった。序盤3失点も、反撃への流れをつかみかけた6回。「粘り切りたかった」と悔いを残した。

鈴木監督は「新潟を代表する投手になってくれた。新潟の球児の見本」とエースをねぎらった。昨夏の甲子園、初戦2回戦で敦賀気比(福井)に6-8で敗れた。田中は15安打8失点。その後は「成長した姿を甲子園で見せる」という思いで実力アップを図ってきた。新潟大会では最速を150キロの大台に乗せるなど、進歩を体現してきた。

この日もセ・パ全12球団のスカウトがネット裏に陣取った。全国でも注目の存在になった。それでも勝てなかった甲子園。「悔いの残る場所のまま」と言う。「これからも野球を続ける。よりよい選択をしたい」。進路はプロ志望届提出を含めて熟慮する。不運も重なった大舞台での経験を、将来へのステップにして高校野球を終えた。【斎藤慎一郎】

▽主将の竹野聖智捕手(3年=4打数2安打) 甲子園で成長した姿を見せるために今までやってきたが、できなかった。後輩たちはここに戻ってきて初戦を突破し、全国制覇をしてほしい。

▽高橋史佳左翼手(2年=2番手で甲子園初登板し3失点) 抑えてやろうと思ったが空回りして無駄な力が入ってしまった。来年は自分が中心になって甲子園に帰ってきて、勝てるようにしたい。

▽村越仁士克投手(3年=3番手で登板し1失点) 昨夏も1イニング登板した。今年は観客が入った中だったので思ったより緊張したが、自分の投球ができて良かった。

▽海星・加藤慶二監督(日本文理・田中を攻めて初回2得点) 立ち上がりに不安があるとの情報だった。うちの打線が逃さずにたたいてくれた。

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