「全員野球」で頂点に1歩前進した。東北勢の大トリで登場した仙台育英(宮城)が、2桁安打2桁得点で鳥取商に快勝。3回戦進出と16強入りを決めた。

6回、“つなぎの4番”斎藤陽(ひなた)外野手(2年)が先制適時打を放ち、この回一挙5得点。8回は8連打5得点で突き放し、5投手の継投による2安打完封リレーで逃げ切った。これで東北勢は、5チームが初戦を突破。12日は一関学院(岩手)、八戸学院光星(青森)、鶴岡東(山形)が3回戦進出を目指して試合に臨む。

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仙台育英が「全員野球」で初戦を突破した。10点リードの9回2死、湯田統真投手(2年)が5番手でマウンドに上がり、ベンチ入りした18人全員が甲子園の土を踏んだ。須江航監督(39)は「この世代は入学からコロナに非常に苦しんだ。今日はどんな展開になっても全員出したいという思いがあった」。湯田がしっかり無失点に抑え、つかんだ3年ぶりの「夏1勝」。一列に並んだナインは、甲子園に響き渡った21年春センバツ以来となる校歌を聴き、勝利を実感した。

序盤3イニングは走者が出塁も先制できず。互いに無得点で進んだ6回1死三塁。斎藤陽が外角直球を流し打ち。三遊間を抜ける先制左前適時打を放ち、部員らが応援する一塁側スタンドが沸いた。「最低でも外野フライで1点を取る意識でいったが、間を割ることができて、いい感じで点を取れた」。165センチと小柄だが、宮城大会はチーム最多タイの5打点。大舞台でも勝負強さを発揮した。

均衡を破った4番の一打に打線が勢いづいた。21年春センバツを経験した遠藤太胡(だいご)外野手(3年)が、続く1死一、二塁で中前適時打。中堅手が打球処理でもたつく間に一走も生還するなど、この回5得点。8回は斎藤陽の中前打から8連打で5得点し、2度のビッグイニングで突き放した。「(6回に)陽が打ってくれて、チームの流れはグッとこっちに寄ったので、『一気にたたみかけるぞ』という意識で自分たちはノリに乗っていけた」と2年生の活躍に刺激を受けていた。

東北勢初の「日本一」を狙う名門は、大会6日目での初戦に向け、準備を重ねていた。須江監督は「打撃に集中して取り組むことができた。状態が上がっている感触はあったので、見事に発揮してくれた」。3回戦の相手は、明秀学園日立(茨城)。勝敗を左右する先発投手については「明秀さんがどういうチームなのかもう1回よく見て分析して、何が一番試合に求められるのか、よく考えた上で選択したい」。守り勝つ野球で主導権を握り、3年ぶりの8強に突き進む。【相沢孔志】

▽鳥取商・久城(主将で8回に代打の空振り三振。その裏、一塁守備に) 小さい頃、ここに立ってプレーしたいと。悔いの残らないよう、全員に声を掛けて存分に楽しみました。

▽鳥取商・前田(3番捕手で4打数無安打) 素直に悔しい。甲子園でプレーできて、みんなでこの舞台に立てて、すごくよかった。