都立新宿の野球部員はイチロー氏(49=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)から指導を受けた2日間を振り返った。生徒が指導を受けているようすに、田久保裕之監督(41)も「夢のような時間。覚めないでくれ」と興奮気味に振り返った。

走塁技術や打撃技術、守備時の意識などの指導から多くの学びを実感。主将の中沢志弥(ゆきや)捕手(2年)は「走塁で意識していることは? と質問したら、技術的なことを答えてくれた。第2リードの取り方を教わった。今まで野球やってきたなかでそんな話を聞いたことがなかった。常識が違った」と驚いた。

2日連続でイチロー氏とのキャッチボールをした綿貫拓己外野手(1年)は「まず一緒にやってみて、そこから言葉で教えてくれる。行動でも示していただけるので説得力が高い」と間近での指導を喜んだ。

イチロー氏の引退試合を見に行ったことが野球を始めたきっかけだったという東原慎太外野手(1年)は「感激というか夢のような瞬間だった。教えてもらったことを生かして、恩返しという意味でも甲子園に行きたい。甲子園で成長した姿を見てほしい」と意気込む。同校は甲子園出場経験はないが、イチローイズムで初の聖地を目指す。

 

◆新宿 1921年(大10)に創立の都立進学校で、野球部は46年に創部。部員数は17人。甲子園出場はなく、今夏の東東京大会では4回戦で敗退。主なOBは元中日で現東大監督の井手峻や音楽家の坂本龍一ら。所在地は東京都新宿区内藤町11の4。藪田憲正校長。

 

<過去のイチロー氏の高校野球指導>

◆<1>智弁和歌山(20年12月2~4日)初日は「観察」、2日目から徐々に指導を開始し、最終日にはフリー打撃も披露した。21年の甲子園大会前にも「ちゃんと見てるよ」とメッセージを届け、21年夏にチームは21年ぶりの頂点に立った。

◆<2>国学院久我山(21年11月29、30日)フリー打撃で72スイングし11本の柵越え。三振しない「最後のテクニック」を伝授した。リードの取り方など走塁技術も惜しみなく指導。チームは22年センバツで初の4強進出と快進撃につなげた。

◆<3>千葉明徳(21年12月2、3日)初めて甲子園出場経験のない高校を訪問。ナインだけでなく指導者にも助言。「(練習は)メリハリが大事。ダラダラが怖い」と話し、試合中の采配についても具体的なアドバイスを送った。今夏は甲子園出場した市船橋に4回戦で敗れた。

◆<4>高松商(21年12月11、12日)21年夏の甲子園で智弁和歌山に敗れた長尾監督が「イチローさんにうちにも来てほしい」とラブコールを送って指導が実現。翌年巨人にドラフト1位指名される浅野翔吾(巨人)らを前に、狙いを説明しながらフリー打撃を行うなど手本となって技術を伝えた。「この2日間の時間をたまに思い出してほしい」とティー打撃で使用したバットをプレゼント。同校は今夏の甲子園で8強入りした。