「元気出して行こう!」。東海大菅生(東京)ナインの元気な声がグラウンドに響き渡った。センバツ出場校発表から一夜明け、午後1時30分に練習が始まると約4時間、たっぷり汗を流した。

元気な声出しに全力疾走の選手たちを、26日に就任したばかりの上田崇監督(29)は安心した表情で見つめた。「いつも通りの練習ができた。センバツに向け最高の準備をしていきたい」。若林弘泰前監督(56)による選手への暴力問題で揺れたチーム。急な監督交代より、選手はもちろん、突然の監督就任に動揺を隠せなかったのは、上田監督も同じだった。「最初は遠慮というか。僕としてはポジション(コーチから監督へ)が代わっただけなのに、勝手にプレッシャーを感じてしまって」。26日の練習では、選手たちから元気な声が消えていた。グラウンドを見つめ「このままでいいのか」と自問自答した。

迷いを吹っ切るきっかけを作ってくれたのは、知人のひと言だった「お前らしくないな」。自分らしさとは何なのか。自身を見つめ直し「よし、俺が熱くいくか!」。気持ちを固めた。現役時代から元気がモットーだった。国際武道大では、アパートに大きく「熱い男」と貼り紙をし、誰よりも声を出した。「僕の行動が子どもたちに影響していた。それはよくないと気付きました」。27日、センバツ出場発表の会見では「熱くいきます」と堂々と宣言した。

一体感で好スタートを切った。昨晩の選手間ミーティングでは渡部奏楽(そら)主将(2年)が「初日の練習はモチベーションが大事。やる気で雰囲気が上がってくる」と話し、この日に備えた。元気いっぱいの練習にエースの日当直喜投手(2年)は「一体感が出てきた。これでしっかり前に進める」と、言葉は力強かった。

秋を終え、チームの課題は打撃力と、エース日当に続く2番手投手の育成だ。上田監督は早速ブルペンに足を運び、投手陣の練習をチェック。元ヤクルト宮本慎也氏(52=日刊スポーツ評論家)の長男、恭佑(きょうすけ)投手(1年)には低めの球を指導した。宮本は「もっと低めの球を奥に投げる意識で思い切って投げるといい、と教わりました」と手応えをつかんだ。上田監督も「恭佑は今、2番手投手の中で一番いい。甲子園が楽しみ」と期待した。

新しい指揮官の下、「東海大菅生らしさ」を取り戻した選手たち。しっかりと前を向き、「熱いチーム」でセンバツ頂点へ。元気よく走りだした。【保坂淑子】