夏初の甲子園出場に挑む関東学園大付(群馬)には、「3刀流」の大黒柱がいる。主将も務める高橋空大(くうた)内野手兼投手(3年)だ。磨き続けてきた「人間力」で、「チームの中心になる」と集大成の夏に臨む。

巧打堅守の遊撃手は58人の部員を束ねる主将であり、打線では得点圏打率5割の勝負強さで4番に座る。さらには抜群の制球力と多彩な変化球を駆使し、投手として試合の最後を締める抑え役もこなす。チームの精神的支柱を含め、まさに3刀流の働きを見せる。

今年のチームを「多少のことで心が折れない人間力が強み」と語る。その裏には苦い経験がある。昨夏の準々決勝、桐生第一戦。高橋は代打から出場し3打数3安打の活躍。だが3点を追う7回、無死満塁と攻め立てるも後続が3者連続三振に倒れ、相手投手の気迫にのみ込まれるチームメートを二塁上から見つめた。さらに、普段は起こらないミスも連発したチームは、涙をのんだ。「人間として強くなければならない」と誓い、新チームをスタートさせた。

高校まで主将経験はないが、「自分の行動を見せて、みんながついてこれるように」と毎日、自主練習を欠かさない。チームに方針が浸透してなければ「言い続ける」という。この姿にはチームメートも「努力家」「けじめがある」と尊敬のまなざしを向ける。羽鳥達郎監督(35)も「今年は高橋のチーム。やりたい野球を体現してくれている」と全幅の信頼を置く。

埼玉・行田市から学校のある群馬・館林市まで、片道20キロの道のりを往復3時間かけて自転車で通学する。自主練習に熱が入り、帰宅が午後11時以降になることもある。だが、「全ては夏のためにやってきた。残り1カ月、チーム力を上げて甲子園に行きたい」と意気込む。センバツ出場は86年春に1回あるが、夏は同年の群馬大会準Vが最高成績。高崎健康福祉大高崎、前橋育英、桐生第一の「3強」の壁は厚いが、高橋は「チーム全員の力を借りて勝ち上がる」と、虎視眈々(たんたん)と群馬の頂点を狙う。【黒須亮】