<高校野球鹿児島大会:鹿児島実19-0霧島・串良商・鹿児島第一>◇9日◇1回戦◇平和リース球場

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

 ◇  ◇  ◇

霧島・串良商・鹿児島第一の連合チーム12人の夏が幕を閉じた。昨夏代表校の鹿児島実に0-19の大敗。5回コールド負けも、鹿児島第一の志水(しみず)洋介主将(3年)は「悔いはない。最後までやり切れた」と目に涙はなかった。

集大成の1本だった。5点を追う1回先頭の打席。「ストレートだけに張っていた」と1ボールから直球を流し打ち。一、二塁間を破り、チーム唯一の安打をマークした。塁上では右こぶしを突き上げ、「練習の成果が出た1本。打てて良かった」。平日は7時間授業のため、放課後の練習は30分間に限られるという。そのため、帰宅後の素振りを日課とし「自分が満足するまで振り込んできた」。その成果が、最後の夏に右前打として結実した。

今後は関東の難関私立大法学部への進学を目指し、将来は警察官を志している。「明日から受験勉強に本腰を入れたいと思います」とさわやかに笑った。今度はバットをペンに持ち替え、努力を積み重ねていく。