2連覇中の明豊が5回コールドで快勝発進した。

3番柴田廉之助内野手(3年)が2回に特大2ラン。12安打12得点の猛攻で大分豊府を下した。チームは昨年11月、不慮の事故でチームメートを亡くした。同学年の現3年生らは亡き友の思いも胸に、県勢初の3年連続夏の甲子園出場を目指す。

  ◇  ◇  ◇

亡き友の思いも背負って、明豊の負けられない夏が始まった。0-0の2回に3点を先制し、なおも2死三塁から3番柴田が特大2ラン。内角直球をとらえ、高々と舞い上がった打球は右翼席に飛び込んだ。「こすってライトフライかなと思ったけど、みんなの盛り上がる反応で入ったと確信できました」と会心の笑顔だ。柴田の1発で勢いづいた打線はその後もつながり、夏初陣で12得点を挙げて5回で決着させた。

深い悲しみを胸に、ナインは結束している。新チームが始動した昨夏。練習試合で吉川孝成捕手(当時2年)の鎖骨にファウルチップが直撃。その場で倒れ込み、約3カ月後に搬送先で帰らぬ人となった。同学年の柴田は「今でも…。信じられなくて…」と目を潤ませる。練習でキャッチボールする相手は吉川さんが多かった。打撃論について熱く語り合うこともしばしば。「自分と仲が良くて、本当に野球が大好きだった」。思い出は数え切れない。

チームは吉川さんの写真を“お守り”にしている。「ロッカールームに今日も置いていました。バックに持っている選手もいます」。一緒に夏の大分を戦っている。「(吉川さんは)自分たちが喜んで野球をプレーしている姿を望んでいると思います」。柴田も悲しみをこらえ、常に笑顔の全力プレーを心掛けている。

夏の大分で3連覇を成し遂げたチームはない。川崎絢平監督(41)は「例年以上に勝ちに対しての執念が強い」と現チームを評する。柴田は「挑戦者の気持ちを忘れず、何が何でも甲子園に行きたい」と決意をにじませた。亡き友と聖地へ。強い覚悟で、明豊ナインは勝ち続ける。【佐藤究】

○…明豊・柴田の母美穂さん(48)は、成長した息子に感無量だった。兵庫・加古川市から前日12日に大分入りし、初戦の活躍を見届けた。「体もたくましくなって、明豊に入学してよかったなと思っています」。小学生の頃から活発で、クラスに1人いる「やんちゃ少年」だったという。「家でもずっとうるさくて、学校の授業中でも」と振り返り「今はどこか大人になって、人としても成長してくれたのかなと感じています」と頼もしく見つめていた。