<高校野球愛知大会:享栄3-0愛知産大工>◇21日◇4回戦◇パロマ瑞穂野球場

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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愛知産大工の148キロ右腕、天野京介投手(3年)が享栄・東松との投げ合いに敗れた。「東松君に勝ちたかった。ずっとライバルでやってきたので最後に勝てなくて悔しいです」と唇をかんだ。

ピンチを脱しても、落胆しても喜怒哀楽は封印した。「野手が気にしてしまうので、顔に出さないようにしていました。いいプレーがあっても、平常心で投げようと思っていました」。エースの矜恃だった。

1年秋、2年春も享栄に敗れた。鈴木将吾監督(47)が享栄・大藤敏行監督(61)の教え子という関係から練習試合を重ね、2年半で両エースは親交を深めた。注目を浴び続ける東松の背中を懸命に追いかけた。決着の舞台は最後の夏に用意された。前日20日、連絡を取り合った。「どっちが愛知で1番か決めよう! 真っ向勝負しよう!」。

初回から最速タイの148キロで飛ばした。3失点で敗れたが、4安打に抑えた。試合後、グラウンドで抱き合った東松に「絶対に甲子園に行けよ」と声をかけた。鉄仮面を脱ぎ、純朴な笑顔を輝かせた。今秋、プロ志望届を出すつもり。最高のステージで投げ合う日を楽しみにする。【柏原誠】

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