<全国高校野球選手権:仙台育英4-3履正社>◇17日◇3回戦

優勝候補がともに敗れ、近畿勢が7年ぶりに3回戦で姿を消した。19年夏全国Vの履正社(大阪)は、22年夏全国Vの仙台育英(宮城)と「事実上の決勝戦」とされた大一番で惜敗。同点の8回にドラフト候補の最速151キロ左腕、福田幸之介投手(3年)が決勝スクイズを決められた。春の近畿王者・智弁学園(奈良)は、高校通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎内野手(3年)擁する花巻東(岩手)に打ち負けた。

  ◇  ◇  ◇

仙台育英の狙いは読めていた。3-3の8回1死三塁、履正社の2番手福田はスクイズを警戒。だが、高めに外した渾身(こんしん)の142キロは、完璧なバントで遊撃前に転がされた。「自分のせいで負けてしまって本当に申し訳ないです」。相手の校歌を聞きながら、背番号10はしゃくり上げた。

「頼む」。同点の7回1死二塁で、力投を続けていた先発増田のバトンを受けた。「自分が流れを持ってこようと思っていた」。このピンチは抑えたが、最後は試合巧者の技に屈した。

今春のセンバツは高知に初戦敗退。春の大会も大阪4回戦で大商大高に敗れた。全国制覇した19年以来遠ざかっていた甲子園。特に夏は大阪桐蔭との直接対決でことごとく敗れ、「大阪は1強」の声も聞いた。

「チーム一丸で、ほんまに夏の甲子園を目指そう、日本一を目指そうと。先輩たちが作ってきた履正社。このまま弱い履正社と言われるのではなく、強い履正社に戻そうとみんなで話していた。少しは戻せたんじゃないかと思います」

ノーシードで臨んだ夏の大阪大会。福田は決勝で宿敵大阪桐蔭を3安打完封でねじ伏せた。甲子園でも2つ勝ち、チームで積み重ねた9個の白星が「RISEI」の意地を示していた。

入学時は同学年の投手で3番手の位置づけだった。打者を圧倒する投手になりたいと鍛錬を重ね、球速も151キロまでアップ。プロ注目の投手に成長させてくれた仲間たちに感謝は尽きない。「日本一になれなかったんですけど、チームとして日本一じゃないかと思います」と目を潤ませた。

好きな言葉は「轟(とどろき)」。書道8段の腕前で、甲子園を前に帽子のつばに書き込んだ。「全国に自分の名前とどろかせたいから」。この日は言葉を濁したが、プロ志望届を提出する可能性が高い。強いインパクトを残して、大阪の怪腕が聖地を去った。【柏原誠】

◆近畿勢が姿消す 履正社、智弁学園が敗退。近畿勢6校が8強に入れなかったのは16年以来7年ぶり(3回戦敗退=履正社、2回戦敗退=智弁学園、市和歌山、1回戦敗退=市尼崎、近江、京都翔英)。49代表制になった78年以降は10度目。