「慶応のプリンス」が新たな歴史を切り開く。第105回全国高校野球選手権記念大会は23日、甲子園で決勝戦が行われる。

103年ぶりに決勝進出を果たし、1916年(大5)以来107年ぶりの優勝を狙う慶応(神奈川)は、史上7校目の夏2連覇を狙う、仙台育英(宮城)と対戦する。センバツ初戦、夏の県大会前にも対戦した「運命のリマッチ」。キーマンとなるのはリードオフマンとして今大会出塁率5割超えを誇る丸田湊斗外野手(3年)。人気実力共に兼ね備えたスター1番打者が日本一へけん引する。

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最高の舞台で、リベンジするときがきた。丸田は「ついに来たなっていう感じ」と実感を明かした。試合前の円陣では甲子園決勝の舞台をずっと思い描いてきた。それが実現する。「本当にそこにたどり着いたので、もうあとは目標である日本一になるだけ」。仲間と今までやってきたことを信じて、最高の相手に立ち向かう。

センバツでの苦い思い出を変える。今でこそ強打を誇る慶応ナインだが、センバツ初戦では仙台育英の高橋煌稀投手(3年)、湯田統真投手(3年)、仁田陽翔投手(3年)と現在は150キロ超のトリオに6安打1得点と抑えられた。丸田自身も4打数無安打で四球による1出塁に終わった。「僕が塁に出てチャンスを作ることができなかった。そこが自分の中で、敗因」と振り返る。その悔しさを胸に戻ってきた聖地。今大会は16打数7安打3盗塁と躍動している。「1試合に2出塁は最低目標でやっているが、意識しすぎないでやっていきたい」。準決勝まで1試合2出塁以上のノルマを果たすが、決勝も心の波は凪だ。

ライバル・仙台育英とは毎年夏の地方大会直前に練習試合をする仲だ。今年の夏も7月上旬に実施し、2-4で敗戦。だが丸田は三塁打を放っており「警戒されていると思う。その中で、警戒をうまい具合にプラスの方向に持って行ければ」と自らの役割を理解し、全うする。

森林貴彦監督(50)は「運命の一戦」と語った。7月の練習試合前日、仙台育英・須江航監督(40)と食事をした。お互いに「今度は初戦じゃなくて、決勝がいいですね」と交わした。指揮官同士の約束が現実になった。

丸田はU18W杯の日本代表にも選出された。「本当に衝撃的で、まだあまり考えられない」と話した。「目標の目の前までこれた。あとはそこにチャレンジして向かっていくだけ」。「KEIO日本一」へ-。最後まで駆け抜ける。【星夏穂】

◆丸田湊斗(まるた・みなと)2005年(平17)4月25日生まれ、神奈川県出身。南舞岡スカイラークスで小3から野球を始め、横浜泉中央ボーイズでは遊撃手として中2、3年時に全国大会出場。慶応では2年秋からレギュラー。好きな言葉は「ありがとう」。趣味は音楽鑑賞で「Official髭男dism」が好き。遠投90メートル、50メートル走5秒9。174センチ、73キロ。右投げ左打ち。

◆慶応の仙台育英戦 今年のセンバツで、ともに初戦となる2回戦で対戦。9回表に代打安達が仙台育英3番手の湯田から左前にタイムリーを放ち、1-1の同点に追いついた。タイブレークでは10回裏2死満塁から山田に左前打を打たれ、サヨナラで敗れた。