夏の名場面を「再現」した。金足農が延長11回タイブレークの末、秋田北鷹に8-3で競り勝ち、14年ぶりの決勝進出と東北大会(10月16日開幕、秋田)出場を決めた。吉田大輝投手(1年)が、149球の力投で3失点完投。11回の攻撃では二走として“2ランスクイズ”を成功させた。秋田修英はノースアジア大明桜に4-1で逆転勝ちし、5年ぶりの決勝進出と東北大会出場を決めた。

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吉田が、ここぞの場面で決心した。序盤2回で3点を先制されたものの、粘投していたエースをチームメートが援護し、3-3の同点で延長タイブレークに突入。10回で勝敗は決着せず11回無死満塁、相馬英典捕手(2年)の中犠飛で勝ち越した。さらに1死満塁、加藤汰空(たから)内野手(2年)がスクイズ。三走が生還すると、二走吉田も本塁を目指して激走。

「ピッチャーがフィールディングがいいというのは分かっていたので1回、三塁を踏んだ時に止まったんですけど、(投手が)ツーステップしていたので、行けるかなと思って行った」

先発登板で疲労が出てくる試合終盤に全力疾走。滑り込んで右手でホームベースに触れ、2ランスクイズ(記録は2点投安打)を成功させた。勢いに乗ったチームはこの回5得点。同裏無死一、二塁を無失点で切り抜け、吉田は右腕を突き上げた。

「カナノウ旋風」を巻き起こし、甲子園準優勝を果たした18年夏は、兄輝星(日本ハム投手)らの雄姿を応援席で見ていた。「決まった後は頭の中に出てきた。これ、同じだなって(笑い)」。2ランスクイズで劇的勝利した準々決勝の近江(滋賀)戦の記憶が浮かんだ。東北大会出場は3校のため、この日の勝利で出場を決めたが、まだ目標の途中だ。「自分たちは秋田県トップで東北に乗り込むのが目標。優勝して東北大会に出られるようにしたい」。2試合連続でタイブレークを制した「雑草軍団」が、目の前の一戦に燃えている。【相沢孔志】

 

○…秋田修英はノースアジア大明桜との「私学対決」を制した。2点リードの8回無死二塁、背番号「7」左腕・渡辺聡士投手(2年)は「ここまで来たら気持ちでは絶対に負けちゃだめだ」。後続を打たせて取り、同回を無失点で、8回1失点の好投で決勝に導いた。守備は準々決勝の大館桂桜戦で5失策と崩れたが、この日は無失策。鈴木寿宝(ひとし)監督(60)は「(渡辺が)こんなに長く放ってくれるとは…。予想以上に頑張ってくれた。まだ不安なプレーはあるが、堅実に守れた」と評価した。