高崎健康福祉大高崎(群馬)が春夏通じて初の決勝進出を決めた。左手中指を負傷しているエース佐藤龍月投手(2年)が終盤2回を締め、新チームで公式戦無敗だった星稜(石川)に5-4で逆転勝ち。報徳学園(兵庫)は4-2で中央学院(千葉)に勝利し、2年連続で決勝に駒を進めた。決勝は31日午後0時半開始予定。高崎健康福祉大高崎が勝てば群馬県勢初の春V。報徳学園は22年ぶり3度目の優勝を目指す。

格別の光景だ。無意識の雄たけびを生んだのは、この日最速142キロの直球だった。「今までずっと磨いてきたボールだったので」。高崎健康福祉大高崎の佐藤は、真っすぐで締めたかった。先輩箱山のサインを意気に感じ、空振り三振で星稜に土を付けた。

磨いた直球の回転数は、2400回転にまで達した。極めた指先の感覚で知らぬ間に負荷がかかり、準々決勝の試合途中、中指先の血豆がぺろっとめくれた。29日は水ばんそうこうでケア。この日も試合中に血がにじんだ。だからブルペンでは「70%くらい」と焦ったが、解放されたアドレナリンで28球を投げ抜いた。

神奈川・川崎で育ったが「長崎出身なんです」と言う。両親の出会いの地。父正博さん(53)は海上自衛隊に従事し、艦長経験もある。孤独な仕事だ。「マウンドにいる投手みたいなもんですよね。最後は自分で考えるしかない」。アルプスから息子を見つめ「もう気力で行くしかないですよね」と願った。

息子は今大会初のリリーフへ。マウンドは荒れている。「いつもと違う感じはあったんですけど、どんな環境でも投げられるように練習してきたので」。優しい顔をして、海と歩んできた男のマインドをちゃんと受け継ぐ。決勝は先発するつもりだ。

「どれだけ痛くなっても、どんな体になっても、エースナンバーを背負わせてもらっているので、しっかり覚悟を持って投げたいと思います」。孤独だけれど孤独じゃない。仲間とファイナルに挑む。【金子真仁】

◆3年生が投げずに決勝進出 高崎健康福祉大高崎の登板投手はここまで4試合とも石垣、佐藤の2年生。最近では14年準Vの履正社が溝田、永谷の2年生だけで決勝に進んで以来。3年生が投げずに優勝なら04年済美(福井、藤村)以来20年ぶりとなる。