高崎健康福祉大高崎(群馬)が、春夏通じて初の甲子園優勝を果たした。報徳学園(兵庫)とのセンバツ決勝は1回に2点を先制されるも、逆転勝利。かつて“機動破壊”で注目を浴びたチームは、低反発バットが導入された今大会で強い適時打を重ねるほど進化した。野球愛好会の顧問からスタートした青柳博文監督(51)は涙。群馬県勢はセンバツ初優勝で、競り負けた報徳学園は戦後初の2年連続準優勝に終わった。

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スライダーを投げ終えたエース佐藤龍月投手(2年)の集中を断ち切ったのは、甲子園の大歓声だった。9回2死二塁、空振り三振。「あまり実感がなくて、数秒後に優勝したんだなっていう実感がわいてきて」。駆け寄る仲間たちの姿に、やっと輪の中心にいることを知った。

ボールの回転数への意識を高めた副作用で左手中指を痛め、この日は投げられても「50球くらいでした」。青柳監督も「うちの方が投手陣の起用的には不利」と悟っていたのに、2日連続で先発した石垣がやってみせた。佐藤が「ダブルエースとしてずっとやってきて、心強いっす」と認めるライバルが大舞台で花開いた。

石垣元気投手(3年)は、失策も絡んだ1回の2失点でも崩れなかった。「マウンド度胸というか、ピンチでも冷静にやろうとメンタルが成長できました」。尻上がりに球威を上げ、8回までしのぎきった。優勝を決めると抱き合った。「もううれしすぎて」と感情を爆発させた。

2人の2年生で45イニング7失点。春を制した。佐藤は故障防止のため、今後はインステップの修正に乗り出す。「何年も夏の甲子園に出られていないので、まずは出ることを目標に、そこで優勝を目指せるように」。進化して、また戻る。【金子真仁】

◆高崎健康福祉大高崎 1968年(昭43)創立の私立校。01年共学となり現校名に。野球部は02年創部。甲子園出場は今回で春7度目(夏は3度)。部訓は「不如人和」(人の和はすべてに勝る)。主なOBは長坂拳弥(阪神)柘植世那(西武)湯浅大(巨人)清水叶人(広島)ら。学校所在地は、群馬県高崎市中大類町531。

◆ノーアーチV 高崎健康福祉大高崎は本塁打なし。センバツで本塁打を打たずに優勝したのは01年常総学院以来23年ぶり。